日本消化器内視鏡学会甲信越支部

19,吐下血をきたしたball valve syndrome の1例

新潟県立中央病院 内科
小堺郁夫、田覚健一、田村 康、丸山貴広、渡辺史郎、藤原敬人

 症例は70才、男性。平成14年8月28日新鮮血を嘔吐したために救外受診。RBC 438x104/μl, Hb 10.8g/dl,と貧血を認め、 直ちにGTF施行。球後部から十二指腸下行脚にかけての鮮血液の付着、開大した幽門輪、胃体部大弯に限局した粘膜下出血を伴う発赤し、腫大隆起したひだを認めた。明らかな出血源は指摘できなかったため、外来経過観察となったが、1年後の平成15年8月18日にタール便が出現したため再診。GTFでは幽門輪から球部に胃粘膜が嵌まり込んだ状態で、fiberを前庭部から幽門輪内へ進めると、粘膜の一塊は幽門輪より外れた。嵌まり込んだ粘膜は体部大弯の粘膜でうっ血により著明に腫大し幽門輪に絞扼されたと考えられる部位は帯状に上皮下出血を呈していた。胃の腫瘍性病変を認めないにもかかわらず、ball valve syndromeを来すことは稀と考えられた。