症例70歳女性。平成12年から変形性膝関節症のため、ジクロフェナク坐剤25mg(以下坐薬)を連日使用。平成17年6月から心窩部不快感、食欲不振等を自覚し7月に来院。貧血を認め、精査目的に入院。上部消化管内視鏡上、胃前庭部に全周性のびらん、潰瘍を認め、小彎側の短縮変形が見られた。4型胃癌を考えたが、複数回の生検でも悪性所見は認めなかった。PPI内服したが潰瘍治癒に至らず、瘢痕狭窄は強まった。坐薬使用中は上行結腸にも潰瘍を認めた。NSAID潰瘍を疑い、坐薬を中止したが幽門狭窄が進行し摂食不能となる。TPNとしてPPI静注し潰瘍の縮小がみられ、入院3ヶ月後には再生上皮に完全に被覆された。幽門狭窄に対し内視鏡的バルーン拡張術を計8回行ったが十分な開存は得られず、前庭部の蠕動運動もほとんど認めなかったため保存的治療の限界と考え、幽門側胃切除術を施行した。切除組織標本では悪性所見は認めなかった。