日本消化器内視鏡学会甲信越支部

14, 拡大内視鏡による側方進展範囲診断が有効であった胃分化型早期胃癌の1例

佐久総合病院 胃腸科
宍戸康恵、小山恒男、宮田佳典、友利彰寿、堀田欣一、森田周子、田中雅樹、高橋亜紀子
同 内科
古武昌幸、高松正人

【はじめに】EMRでは切除断端陽性の原因として技術的要因と術前診断の誤りが指摘されていた。しかし、ESDでは任意の範囲を切除し得るため、断端陽性の原因は術前診断の誤りのみとなった。完全切除率を向上させるためには、より正確な側方進展範囲診断を要するが、今回拡大観察が有用であった症例を経験したので報告する。
【症例】60歳代、女性。近医にて施行された上部消化管内視鏡検査(EGD)で早期胃癌と診断された。当院でのEGDにて体上部小弯にびらんを伴う発赤調の陥凹性病変を認めたが、通常及び色素観察では境界不明瞭であった。しかし、拡大観察では病変内に不整な微小血管と細かい腺管構造を認め、進展範囲を明瞭に診断し得た。拡大観察下にマーキングを施行後、ESDにて一括切除した。病理組織学的な進展範囲と拡大観察で診断した進展範囲はほぼ一致しており、最終診断はadenocarcinoma, 0IIc+IIb, 44×30mm in 55×43mm, tub1, T1(SM1:250μm), ly0, v0, Ul-IIs(+), LM(-), VM(-), CurEBであった。
【結論】拡大観察は境界不明瞭な病変の側方進展範囲診断に有用であった。