日本消化器内視鏡学会甲信越支部

9,胃癌術後早期に残胃癌、食道癌が相次いで発見された高齢者の1例

国立病院機構松本病院 外科
小池祥一郎、江口 隆、前野一真、中村俊幸、岩浅武彦
同 内科
松林 潔、宮林秀晴、古田 清
同 研究検査科病理
中澤 功

 症例は95歳の男性。2003年4月嘔吐で発症し、幽門狭窄の疑いで紹介された。上部消化管内視鏡検査では幽門狭窄を伴う進行胃癌を認め、胃内には食物残渣を認めた。下部食道は逆流に伴う食道炎の所見あり、噴門部には異常を認めなかった。腹部CT検査にて腹水を認めたが、全身状態良好であり、耐術可能と考え、幽門側胃切除術を施行した。病理組織学的検査ではL,4.3×4.0cm,type2,tub1>pap,mp,ly2,v2, n1,stageUであった。腹水細胞診ではcy0であった。2004年3月フォロー目的の上部消化管内視鏡検査で残胃小弯後壁に0-T型病変を認め、生検ではGroupX, pap-tub1であった。EMRを行い、病理は25x22mm, tub1>pap, m, ly0, v0, LM(-), VM(-)であった。2005年3月EMR後の経過観察中に下部食道に0-Ua+Uc+Ub病変あり、生検でsccであった。下部食道に60Gyの照射を行い、経過観察中である。見直しにて2004年9月の時点で食道癌を疑える所見があった。初回手術後早期に内視鏡検査を行っていれば残胃病変、食道病変ともに発見できた可能性はあるが、高齢者の場合の治療および検査計画の困難さを感じた症例であった。