日本消化器内視鏡学会甲信越支部

8, 胃静脈瘤破裂に対しクリップによる一次止血後、待期的B-RTOを施行した1例

新潟労災病院 内科
岩崎友洋、渡辺庄治、麻植ホルム正之、高瀬郁夫、太幡敬洋、川端英博
 66歳男性。アルコール多飲歴があり、アルコール性肝障害、食道胃静脈瘤を指摘されたが放置していた。吐血・タール便を主訴に当科に入院。入院当日の内視鏡では食道胃静脈瘤がみられたが、出血点は指摘できなかった。第4病日、内視鏡施行中に突然胃静脈瘤破裂、計3本のクリップで一次止血、待期的B-RTOを施行した。B-RTO後、胃静脈瘤は縮小した。B-RTO施行2週後の内視鏡ではクリップは2本がはずれていたが、粘膜障害はなく、経過を通して再出血も起こらなかった。  胃静脈瘤出血に対するクリップ止血は、比較的容易にできる。胃静脈瘤は粘膜下層を走行しており、胃静脈瘤の発赤は粘膜下層からの粘膜圧迫による菲薄化によるものである。胃には比較的強固な粘膜筋板が存在する。クリップによる粘膜損傷の危険が低い。以上より胃静脈瘤出血に対しクリップによる一次止血は有効であると考えられた。  内容