日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4, 食道原発悪性黒色腫の1例

済生会新潟第二病院 消化器科
牛木隆志、冨樫忠之、渡辺孝治、関 慶一、石川 達、太田宏信、吉田俊明、上村朝輝
同 外科
武者信行
同 放射線科
武田敬子
同 病理検査科
石原法子

 食道原発悪性黒色腫は稀な疾患であるが、今回我々は食道原発悪性黒色腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。症例は69歳女性。咳嗽で当院を受診、CTで食道腫瘍を指摘された。上部消化管内視鏡検査にて上部食道に表面不整の黒色隆起と周囲に黒色粘膜の拡がりを認め、生検で悪性黒色腫と診断した。食道造影では気管分岐部を中心に約14cmに渡る全周性隆起性病変を認めた。CT、MRIをはじめ皮膚、婦人科、眼科領域の全身検索の結果、食道原発と考えられ、気管、大動脈への明らかな浸潤所見及び遠隔転移を認めず、食道亜全摘術を施行した。病理診断ではS-100蛋白陽性、HMB-45陽性の悪性黒色腫でly1、v0、pN2(+)であった。術後化学療法は希望されず行わなかった。腫瘍マーカーとして5-S-CDは術前31.3nmol/lであったが4.9 nmol/lまで低下した。現在、経過観察中である。