日本消化器内視鏡学会甲信越支部

2, 偽腔を形成した食道蜂蜂窩織炎の1例

山梨県立中央病院 消化器内科
細萱直希、小嶋裕一郎、松井 啓、鈴木洋司、望月 仁、 廣瀬雄一、高相和彦

 症例は70歳、男性。C型肝硬変のため当科で経過観察中であったが、2004年9月11日より発熱、咽頭痛が出現し、9月12日受診。抗生剤,NSAIDを処方され帰宅。その後も症状が持続し9月14日のCTで食道の壁肥厚があり、精査加療のため同日当科に入院。入院翌日の上部消化管内視鏡検査では、食道入口部左側に約1/3周性の膿の付着する白苔を認め、同部位から切歯より35cmまで浮腫状の粘膜面で送気しても十分に伸展できなかった。膿の培養でKlebsiella pneumoniaeが検出された。9月22日の上部消化管内視鏡検査では、切歯から15cmに黄白色の膿の排出を伴う潰瘍を認め、同部位から偽腔を呈し、切歯から25cmの位置で偽腔の遠位側の開口部が観察された。CT、食道造影でも偽腔が描出された。その後嚥下痛、嚥下困難は改善し、11月11日退院。2005年4月6日の上部消化管内視鏡でも食道は偽腔を呈し、その表面は粘膜上皮で覆われていた。本例はCT像および内視鏡像から食道蜂窩織炎と考えられ、その後自壊し偽腔が形成されたと推察され興味深く、文献的考察を加えて報告する。