日本消化器内視鏡学会甲信越支部

71.激しい右側腹部痛を訴え、診断に苦慮した胸椎圧迫骨折の一例

富士吉田市立病院内科
中川元希、山本泰漢、高橋正一郎

症例:83歳、女性主訴:右側腹部痛現病歴:元来健康。平成16年7月21日より右腹部から腰部 にかけての激しい自発痛を認め、近医を受診した。鎮痛剤を処方され痛みは一時軽快したが、7月 24日に再度症状出現したため、当院受診した。レントゲン、CT上明らかな痛みの原因となる所見 は認められず、また血液検査上でも明らかな異常は認められなかったが、症状が強いために精査 加療目的にて当日入院となった。既往歴・家族歴;特記すべき事項なし入院後経過:理学的所見 上、右季肋部に圧痛を認め胆石症など消化器系疾患が疑われた。しかし採血、採尿所見、および 腹部造影CT、腹部超音波、上部消化管内視鏡検査等でも明らかな異常は認めず、腹痛の原因は同 定出来なかった。消化器系の検査で異常を認めなかったため、他疾患の可能性を考慮し、整形外 科依頼した。胸椎MRI検査にてTh8の胸椎圧迫骨折が認められたため、整形外科へ転科となった。 バストバンドの装着と安静により徐々に疼痛は軽快し、8月26日に退院となった。まとめ:強い 腹部症状を来たし、消化器系の疾患を疑ったが、胸椎圧迫骨折による症状であった症例を経験し た。腹部症状を来たす疾患として、胸椎圧迫骨折も鑑別疾患として考える必要がある。