日本消化器内視鏡学会甲信越支部

69.原発不明の後腹膜リンパ節腺癌転移の1例

長野県立木曽病院内科
沖山葉子、吉岡美香、高橋俊晴、高山真理、小山貴之、小林永幸、飯蔦章博
長野県立木曽病院外科
北沢将人、小松大介、久米田茂喜
信州大学病理
大谷方子

症例は72歳男性。2004年4月、不定期に出現する臍周囲痛を主訴に当院内科を受診した。血 液検査にてLDH軽度上昇及びCA19-9高値を認めたため、消化器原発の腺癌を疑い、腹部超音波、 胸腹部CT、上部及び下部消化管内視鏡検査を施行した。胸部及び消化管には特記すべき異常なく、 腹部CTにて左腎静脈直下の大動脈腹側から大動脈と下大静脈の間に及ぶ径30mm強の充実性腫瘤 を認めた。また、肝臓・膵臓・腎臓に嚢胞を疑う低濃度腫瘤を認めた。リンパ節病変(他部位原発 癌のリンパ節転移または悪性リンパ腫)及び後腹膜腫瘍が鑑別に挙がり、ガリウムシンチを行った ところ集積は後腹膜腫瘤部のみに認められ、血管造影検査では腫瘍濃染像や血管の増生像、腫瘍 血管の不整像はなかった。膵癌の可能性を考えERCP及びPETを予定したがご本人の同意が得られ ず、MRI,MRCPを施行したが膵の多発嚢胞性結節及び肝多発嚢胞性病変を認めるも明らかな充実 性成分は指摘されなかった。診断目的に開腹リンパ節生検を施行したところ、左腎静脈直下大動 脈左側に神経叢浸潤を伴う腫瘤を、また肝に多発結節性病変を認め、両部位の試験切除標本から 腺管構造を有し粘液を多量に含む転移性腺癌を認めた。その後疼痛緩和目的の放射線治療施行し、 化学療法(cisplatin+fluorouracil,Gemcitabin)を施行中である。Mayo ClinicのBlaszykらの報 告によれば原発不明癌は全悪性腫瘍患者の約0.5-5%とされ、死後病理解剖にて原発巣が確認でき た症例の検討では肺、膵及び胆管、消化管が多い。原発巣の確定に至らず苦慮した今回の症例に ついて画像及び病理組織学的検討を行い、若干の文献的考察を加え報告する。