日本消化器内視鏡学会甲信越支部

68.上腸間膜動脈閉塞症手術症例の検討

長野県立木曽病院外科
小松大介、北沢将人、久米田茂喜
長野県立木曽病院内科
吉岡美香、高橋俊晴、高山真理、沖山葉子、飯嶌章博
信州大学
大谷方子

【緒言】急性腹症のなかで,上腸間膜動脈閉塞症(以下;SMAO)は早期に診断し,適切な処置 を行わなければ腸管壊死から腸管大量切除を余儀なくされる予後不良な疾患である.今回,われ われはSMAOの5例を経験したので,臨床的特徴と早期診断の意義について文献的考察を加えて報 告する.【対象】過去5年間に当科において外科治療がなされたSMAOは5例存在した.年齢は 53歳から89歳(平均72.8歳)で,男性3例,女性2例であった.【結果】いずれも突然の腹痛と嘔 吐にて発症しており,基礎疾患として心房細動は3例,閉塞性動脈硬化症は1例,女性ホルモン補 充療法中は1例で有していた.腹部理学所見では4例で腹膜刺激症状,1例で筋性防御を認めた.腹 部造影CT検査を行った3例全例において上腸間膜動脈の閉塞を認め,さらにそのうち1例で3DCT angiographyを行ったところ明瞭に上腸間膜動脈の途絶を視覚化し得た.発症から手術まで の時間は4時間から3日間で,術式は小腸広範囲切除術2例,小腸広範囲切除術+結腸右半切除術2 例,血栓除去術1例で,4例(80%)を救命し得た.【考察】SMAO救命のためには,基礎疾患の 把握と腹部造影CT検査による注意深い画像診断を行い,可及的早期における治療開始が重要であ ると思われた.