日本消化器内視鏡学会甲信越支部

65.ホタルイカ生食により著明な胃壁肥厚を呈した、旋尾線虫幼虫TypeX感染症と思われる2症例

長岡赤十字病院消化器科
山田聡志、加藤卓、山内芳樹、横山恒、坪井康紀、柳雅彦、高橋達

我々はホタルイカ生食により著明な胃壁肥厚を呈した、旋尾線虫幼虫TypeX感染症と思われる 2症例を経験したので報告する。症例1は28歳女性で、ホタルイカ生食翌日に上腹部痛で発症、 CT、上部消化管内視鏡検査にて胃壁の著明な肥厚を認めた。白血球数は増加していたが好酸球の 増加は認めなかった。絶食、輸液で第3病日には症状が軽快し、再度の内視鏡検査でも胃壁の肥 厚所見は改善し、第9病日に退院した。症例2は42歳、1型糖尿病のためインスリン治療中の女性 で、ホタルイカ生食後4日目に上腹部痛にて発症し、腹部CT、上部消化管内視鏡検査にて胃壁の 著明な肥厚を認めた。白血球数は軽度上昇、好酸球も上昇を認めた。絶食、輸液で症状は軽快し、 第11病日で退院した。両症例とも旋尾線虫幼虫Type X抗体を測定し、入院中の検体は陰性 (200倍希釈)であったが、退院後の測定では陽転し、旋尾線虫幼虫Type X感染症と考えられ た。ホタルイカ生食による旋尾線虫幼虫Type X感染症は、一般的に腸閉塞など腸病変が主体と されている。しかし昨今のグルメブームなどから、ホタルイカの生食の常態化による旋尾線虫幼 虫Type X感染症症例の増加がみられ、腸病変のみではなく胃病変についての報告も散見される ようになったので、文献的考察も含めて報告する。