日本消化器内視鏡学会甲信越支部

64.2度の完全寛解後、マクログロブリン血症を伴う再発をみた胃MALTリンパ腫の1例

信州大学医学部消化器内科
伊東一博、小見山祐一、進士明宏、横澤秀一、村木崇、井上勝朗、金子靖典、三澤倫子、新倉則和、越知泰英、清澤研道
信州大学医学部消化器内科内視鏡診療部
小松健一、赤松泰次

68歳の男性。H8年11月腹部不快感、体重減少を主訴に当院受診し、上部消化管内視鏡検査 (EGD)にて胃低異型度MALTリンパ腫と診断した。骨髄浸潤を認めたためstage4と判定し、 CHOP療法を5クール施行した。治療後も胃病変は残存し、Helicobacter pylori感染を認めたた めH10年6月除菌療法を施行し一旦完全寛解(CR)した。一年後EGDにて胃の局所再発を認め、 H12年9月放射線療法(total 30Gy)を施行して再びCRとなった。その後経過良好であったが、 H 1 6 年3 月頃より鼻出血を頻回に来たし、4月に脳出血を発症した。血液検査にてIgM 3,650mg/dlと著明に上昇し、可溶性IL2レセプターも2120U/mlと高値を示した。胃MALTリン パ腫の再発によるマクログロブリン血症の疑いで同年6月当院へ再入院した。眼底出血、鼻出血な ど出血傾向があり、マクログロブリン血症に伴う過粘張度症候群と考えられたため、まず免疫吸 着療法を行った。全身検索を行ったところ、胃には再発を認めなかったが、直腸、回盲弁、およ び骨髄に異型リンパ球の浸潤を認めた。現在、リツキシマブを加えたR-EPOCH療法を行っている が、自覚症状は改善しIgMも正常化、骨髄内の異型細胞は消失した。マクログロブリン血症を 伴ったMALTリンパ腫の報告は1985年から2004年までMedline、医学中央雑誌で検索したとこ ろ15件あり、そのうち胃MALTリンパ腫に限ると5例であった。一般にMALTリンパ腫にみられ るマクログロブリン血症はMALTリンパ腫の播種に伴う場合が多く、比較的まれではあるが MALTリンパ腫の再発形式の一つと考えられる。