日本消化器内視鏡学会甲信越支部

62.メシル酸イマチニブ治療により組織学的CRが得られた再発GISTの一例

新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器・一般外科
海部勉、神田達夫、大橋学、中川悟、松木淳、中島真人、畠山勝義

【背景】転移・再発性消化管間質腫瘍(GIST)に対しメシル酸イマチニブは高い効果を発揮する. PRとSDを加えた病勢コントロール率はGIST全体の85%にみられるが,CR例はまれとされる. また奏効を生じた後に増大に転じる自然再燃の存在が問題となっている.今回我々は胃GIST再発 例に対しメシル酸イマチニブ治療後に根治手術を行い,組織学的にCRを確認した一例を経験した ので報告する.【症例】41歳女性.2001年5月胃GISTに対し他院にて胃全摘術施行.免疫組織 染色ではKIT及びCD34は陽性,S-100, HHF-35は陰性であった.2002年1月腹部CTにて食道 空腸吻合部に径2cm大の腹膜播種と思われる再発腫瘍が確認された.2002年3月12日イマチニ ブによる治療を開始.著明な効果が認められ,2002年8月画像上CRの判定.その後も治療は継続 されたが,経済的な理由により2002年11月治療は中止となった.2003年9月CTにて食道空腸 吻合部の同部位に再発を生じ,10月イマチニブ内服治療を再開.病変は縮小傾向にあったが,イ マチニブ内服にて嘔気などの副反応があり,イマチニブ離脱と根治を目的に2004年7月8日手術 が行われた.【手術所見】腹膜播種,遠隔転移は認められなかった.横隔膜正中切開下に食道空 腸吻合部の局所切除を行った.肉眼的には瘢痕組織のみであり,腫瘍組織は認められなかった. 【病理学的所見】標本は全割して検索した.HE染色では腫瘍性病変は認めず,CD34, KITの免疫 染色でも特異的な陽性所見は認められず,組織学的にCRと診断された.【結語】GISTに対する メシル酸イマチニブ治療で組織学的CRは生じ得る.自然再燃例の問題からイマチニブ治療後奏効 時における外科的治療の介入につき興味深い症例と思われた.