日本消化器内視鏡学会甲信越支部

61.グリベックにて治療後切除を施行した胃原発GISTの1例

新潟県立がんセンター外科
土屋嘉昭、梨本篤、薮崎裕、田中乙雄、瀧井康公
新潟県立がんセンター内科
今井洋介
新潟県立がんセンター病理
太田玉紀

症例は58歳で女性。2003年7月下腹部腫瘤に気付き、近医を受診した。当院内科を紹介され入 院した。CTにて腫瘍は巨大で腹部全体に及び、内部は充実性や嚢胞成分を含む不整な腫瘍で、播 種様の所見は見られないものの胸腹水を伴い、切除困難なGa s t r o i n t e s t i n a l s t r oma l tumor(GIST)が考えられた。超音波下の生検を行った。病理ではc-kit 陽性、Cajal cell type の GISTと診断された。直ちにグリベックを投与開始した。約1年で腫瘍はCTにて15cm程度に著明 に縮小し、胃原発と考えられた。FDG-PETにて腫瘍は描出されなかった。患者が切除を希望した ため2004年8月手術を施行した。腫瘍は胃の大弯側より発生し、胃壁外性に発育したGISTで横行 結腸に浸潤しており、胃部分切除・横行結腸切除を施行した。リンパ節転移、肝転移、腹膜播種 なく根治手術が可能であった。病理組織学的所見ではc-kit 陽性、Cajal cell type のGISTで腫瘍 細胞の残存が確認された。GISTの治療は切除が原則であるが、切除不能や再発例に対してはグリ ベックが投与されている。しかし完治症例はほとんどなく、耐性例も報告されており、予防投与 を含め外科治療との組み合わせなどはまだ確立しておらず今後の検討課題となっている。今回グ リベックにて治療後切除が可能となった胃原発GISTの1例を経験したので報告する。