日本消化器内視鏡学会甲信越支部

60.腹腔鏡下胃内手術で摘出した胃内発育型GISTの1例

富士見高原病院外科
塩澤秀樹、岸本恭、安達亙
富士見高原病院内科
矢代泰章、太田裕志、小松修

腹腔鏡下胃内手術を行った噴門近傍の胃内発育型GIST症例を報告する。症例は73歳、男性。主 訴は胃腫瘍の精査。20年ほど前より胃腫瘍を指摘されていたが、自覚症状はなかった。上部消化 管内視鏡検査では、噴門近傍の胃体上部小弯に4cm弱の中央陥凹を有する粘膜下腫瘍を認めた。 超音波内視鏡検査では固有筋層から発生した腫瘍と考えられ、胃壁外への発育は認められなかっ た。CTでは石灰化を伴った腫瘍で、胃壁外への発育は認められなかった。以上より、噴門近傍の 胃体上部小弯に存在する胃内発育型粘膜下腫瘍と診断し、腹腔鏡下胃内手術を行った。術中に上 部消化管内視鏡を挿入して腹腔鏡とともに腫瘍を観察し切離線を決定し、自動縫合器を用いて腫 瘍を切除した。腫瘍は回収袋に収納し上部消化管内視鏡を用いて経口的に摘出した。摘出物は 3.3cmx3.3cmx3.0cmで、病理組織学的にはGIST、uncommitted typeであった。術後経過は 良好で術後9日目に退院した。噴門部近傍の胃内発育型粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡下胃内手術は、 噴門との関係を確認可能な有用な術式である。上部消化管内視鏡を併用して切離線を決定するこ とにより手術の精度が向上すると思われた。