日本消化器内視鏡学会甲信越支部

59.ESDにより核出術をおこなった胃GISTの1例

市立甲府病院消化器科
大高雅彦、三浦美香、嶋崎亮一、若宮稔、福田和典、赤羽賢浩
市立甲府病院外科
加藤邦隆
武藤内科・胃腸科医院
武藤純一

症例は50歳、男性。主訴は眩暈。現病歴:1994年に初めて胃の小ポリープを指摘され、経過 観察を指導されていた。今回、健診でポリープを指摘され、前医の内視鏡検査で胃弓隆部に約 2cmの粘膜下腫瘍を認め、頂部にdelleが見られたため当院へ加療目的に紹介された。以前より 時々眩暈あり。黒色便の自覚はなく、貧血を指摘されたことはない。超音波内視鏡検査(超音波 プローブ)では、第3層を主座とする腫瘍で内部エコーは低エコーであった。粘膜下層の非薄した 高エコー層を介して固有筋層の低エコー層を圧排していた。腹部CTでは胃内腔に突出する腫瘤を 認めた。壁外への浸潤やリンパ節転移、遠隔転移は認められなかった。粘膜下腫瘍の増大傾向を みること、delleがあり出血の原因となりうる可能性があることからESDによる核出術を行った。 グリセオールを局注剤に選択し、粘膜切開は針状メスとITナイフで、粘膜下層の剥離はHookナイ フを用いて切除した。切除標本は22x14x13mmの粘膜下腫瘍で、割面で白色充実性の境界明瞭 な腫瘍であった。病理組織学的には紡錘形細胞の錯綜した増生がみられ、核分裂像はほとんど認 められなかった。免疫組織学的にはc-kit(+), CD34(+), smooth muscle actin(-), S-100 (+)で良 性のGISTと考えられた。術後に誤嚥性肺炎と黒色便が見られたが、いずれも保存的に軽快した。 粘膜下層を主座とする内腔発育型の粘膜下腫瘍はESDによる核出術が可能なことがあり、低侵襲 で有用な治療法と考えられた。