日本消化器内視鏡学会甲信越支部

56.自作water jetの作り方

佐久総合病院胃腸科
竹内学、小山恒男、宮田佳典、友利彰寿、堀田欣一、森田周子、米湊健、田中雅樹、洪英在、高松正人、古武昌幸、比佐岳史

ESD(Endoscopic Submucosal Dissection)における最初のハードルは出血である.出血時に は,素早く洗浄して,出血点を同定し,確実な止血操作を行うべきである.しかし,その際に鉗 子口からシリンジを用いて洗浄を行ったのでは,せっかく出血点を同定しても,処置具を挿入し ている間に視野が不良になり,止血処置が困難になる.これを予防するためには,処置具を挿入 したまま洗浄可能なwater jet機能付きscopeが有用であるが,現在市販されているwater jet付き scopeの数は少なく,その使用は限られているのが現状である.そこで当科では自作water jetを 考案し,ESDに有用であったため,その作成方法及び実際の使用につき供覧する.用意するも の:局注針の内筒,先端透明フード(Olympus社製D-201-11804),ビニールテープ.作成方 法:scope先端にある鉗子口脇の平坦な部分にチューブを約4mm出した状態で先端透明フードを 装着する.内視鏡画面上,8時方向から処置具が出るためチューブを7時方向になるように調整す る。次にビニールテープでアタッチメント及びチューブを固定する.angle操作時にwater jet チューブが抜けることがあるため,チューブにやや撓みをもたせて固定する必要がある.ESDの water jetには、以下のmeritがある.粘膜切開時及び粘膜下層剥離時の出血点確認に有効で,湧 出性出血の場合は,Hookナイフ背側を出血部位に軽くあて,spray凝固,60W ,effect2で一瞬 通電すると止血できる.また噴出性出血の場合は,止血鉗子を用いるが,出血部位を把持した後 に洗浄し,出血の持続を認めなければ,深部へのburnの影響が出ないように止血鉗子を少し引き 上げて,soft凝固,60W,effct5で約1秒通電すると止血できる.止血操作のみでなく,粘膜下層 局注としても利用可能で,出血させずに注入可能である.更に粘膜下層内に血液が滲み込んだ状 態で通電すると,黒コゲとなり粘膜下層の視野が悪くなる.water jetで粘膜下層の血液を洗い流 してから通電すると,黒コゲを予防できる.しかしこのwater jetは,1回の作成に約5000円を 要するため,最近では市販のポリエチレンチューブ(5m 500円)を応用している.