日本消化器内視鏡学会甲信越支部

52.発赤で発見された早期胃癌(印環細胞癌)の一例

富士吉田市立病院内科
山本泰漢、中川元希、高橋正一郎
富士吉田市立病院外科
小林純哉、石川仁

症例:65歳、男性。主訴:特になし(食道静脈瘤精査目的)。現病歴:慢性C型肝炎、 Buerger病にて近医通院中であった。肝炎精査のため平成16年4月に当院紹介受診。食道静脈瘤 精査目的にて5月に施行した上部消化管内視鏡検査にて、胃角部前壁に発赤を伴ったビラン性病変 を認めた。生検組織にて印環細胞癌が検出されたため、精査目的にて同年6月に入院となった。既 往歴:62歳に慢性C型肝炎、Buerger病を指摘。輸血歴なし。飲酒歴:機会飲酒。喫煙歴:なし。 家族歴:特記すべきことなし。入院後経過:理学的所見にて異常を認めず。血液検査所見にて腫 瘍マ−カ−の上昇等は認めなかった。上部消化管内視鏡検査にて、胃角部前壁に約1cm大の発赤 を伴った陥凹性病変あり。壁硬化所見を認めず。上部消化管造影検査では病変を指摘できず。超 音波内視鏡検査では粘膜層の肥厚所見のみであり、腹部CT検査など各種画像検査において明らか な転移を指摘できず。以上より早期胃癌(粘膜癌)と診断したが、印環細胞癌が検出されており 外科的処置の適応と判断。外科転科となり7月7日に幽門側胃切除が施行された。摘出標本の病理 所見では早期胃癌、深達度は粘膜層であった。まとめ:印環細胞癌は腺管構造、乳頭状構造を形 成するといった細胞接着性に乏しく癌細胞はバラバラに組織内に浸潤する特徴がある。胃癌ガイ ドラインでは、粘膜切除術の適応は2cm以下の肉眼的粘膜癌と診断される病変で、組織型が分化 型。肉眼型は問わないが、陥凹型ではUL(-)と記されている。近年様々な施設において未分化型 癌の粘膜切除術が散見されるが、本症例においては陥凹型の印環細胞癌であり、リンパ節および 脈管浸潤も考えられたため幽門側胃切除が施行された。