日本消化器内視鏡学会甲信越支部

50.放射線療法・化学療法(CPT-11/CDDP)療法を施行した食道未分化癌(小細胞型)の一例

信州大学医学部消化器外科
町田水穂、小出直彦、斉藤拓康、久保直樹、丸田福門、宮川眞一
信州大学医学部病理
石井恵子
丸の内病院消化器科
中村直

症例は68歳の男性、胸やけを主訴に近医を受診した。上部消化管内視鏡検査にて切歯より 26cmから33cmの中部食道に2型の腫瘍を認め、生検の結果、食道未分化癌(小細胞型、以下食道 小細胞癌)と診断された。胸部CTでは大動脈への浸潤、左主気管支への浸潤、さらに噴門リンパ節 の腫脹が見られ、転移と考えられた。T4、N2、M0、Stage4の診断で、化学療法を施行した。 CDDP 100mgをday1、CPT-11 90mgをday1,8,15に投与、1週休薬を1コースとし、2コース 施行した。1コース終了後の上部消化管内視鏡検査では原発巣の縮小傾向が認められたが、2コー ス終了後では、腫瘍の再増殖が認められ、CT評価でも腫瘍は軽度の増大傾向を認めた。このため 放射線療法を追加施行することとし30Gyの体外照射を行った。放射線治療後のCT検査、上部消 化管内視鏡検査では原発巣は著明に縮小していた。その後原発巣については著変を認めていない が、噴門リンパ節の増大傾向を認めた。追加治療を考慮したが、自覚症状が無く、本人が治療を 希望されず6ヶ月間経過観察されていた。しかしfollow up CTにて噴門リンパ節の増大を認めた。 上部消化管内視鏡検査では原発巣は軽度の瘢痕として認められるのみであったが、噴門転移リン パ節と考えられる腫瘤の胃内への突出浸潤を認め、またそれに伴うと考えられる疼痛が出現した。 このため本人が追加治療を希望された。前回治療時の化学療法の効果は不十分であり、放射線療 法がより効果が高いと判断し、現在射線療法を施行中である。食道小細胞癌は食道悪性腫瘍中 0.05〜2.4%と頻度が低く、また悪性度が高い疾患である。今回我々は食道小細胞癌に対し化学 療法、放射線療法施行により腫瘍の縮小を図ることが可能であった一例を経験したので報告する。