日本消化器内視鏡学会甲信越支部

48.同時多発バレット表在食道癌の1例

佐久総合病院胃腸科
米湊健、小山恒男、宮田佳典、友利彰寿、堀田欣一、森田周子、竹内学、田中雅樹、比佐岳史
佐久総合病院内科
古武昌幸、高松正人

症例は79歳、男性。近医にて逆流性食道炎と診断されPPIを内服していたが、定期検診のEGD にて食道病変を指摘され当院紹介となった。Ae前壁側のSSBE内に20mm大で0-Ip型の不整型隆 起性病変を認めた。0-I型病変だが、くびれがあるため深達度mと診断した。またバレット食道癌 は多発することがあるためIInd lesionを検索したが、通常・色素内視鏡では発見できなかった。 拡大観察では後壁側のSSBE内に不整型で口径不同の異常血管網を認め、同部のpitが不明瞭化して いたことから0-IIb型、深達度mのバレット食道癌と診断した。右壁側、左壁側境界は拡大観察に て異常血管の領域として認識できたが、肛門側に扁平上皮島を認めたため、同部を肛門側境界と 判断した。前壁病変と後壁病変に連続性は無く、同時多発バレット表在食道癌の診断にてそれぞ れESDを施行した。病理診断は両病変ともに深達度mの高分化型管状腺癌であり、後壁病変の病 変肛門側の断端が陽性であった。後壁病変肛門側の扁平上皮島を病変境界と判断し、同部を拡大 観察しなかったことが境界診断を誤った原因と考えられた。2ヶ月後の再検時通常観察ではESD 潰瘍瘢痕部肛門側に病変を認識できなかったが、拡大観察では口径不同な血管の領域として、酢 酸撒布後拡大観察ではpitの不明瞭な領域として約4mm大の病変を認識し得た。微小病変のため生 検はせず瘢痕部を含めてESDを施行した。最終診断は4mmの高分化型管状腺癌、深達度mであっ た。バレット表在癌の内視鏡診断は困難とされているが、特に本例のような0-IIb型病変の場合で は通常・色素内視鏡での診断は困難である。しかし、拡大観察では不整型で口径不同の異常血管 網やpitの不明瞭化が認識され、バレット表在食道癌の診断に拡大観察が有用であった。