日本消化器内視鏡学会甲信越支部

45.下咽頭脂肪腫瘍の2例

信州大学医学部消化器内科
村木崇、横澤秀一、三澤倫子、伊東一博、井上勝朗、金子靖典、進士明宏、小松健一、新倉則和、越知泰英、赤松泰次、清澤研道
中信松本病院
菅智明
相澤病院
五十嵐亨、津金永二、宮田和信

【症例1】64歳の男性。2003年春頃から嚥下障害を自覚し、同年夏頃より口から腫瘤が飛び出す ようになった。2004年3月近医にて上部消化管内視鏡検査を受けたところ下咽頭に基部を持つ長 さ10cm程の粘膜下腫瘍を認めた。超音波内視鏡上、全体に高エコーで一部低エコーな部位も認め た。脂肪由来腫瘍が疑われ、加療目的にて当科紹介となり、同年5月18日内視鏡的切除術を施行 した。組織学的に、脂肪細胞が密に増生し間質には線維化とlipoblastも散見された事から、Well differentiated lipoma-like liposarcomaと診断された。外科的に追加切除を行う予定である。
【症例2】59歳の男性。2003年9月から嗄声を自覚、近医にて精査を行い食道癌(2型+随伴IIc病 変)、食道に粘膜下腫瘍を認め、精査加療目的にて当科紹介された。上部消化管内視鏡検査にて下 咽頭に基部を持つ軟らかい長さ7cm程の粘膜下腫瘍を認め、食道入口部に2型進行癌、さらに肛門 側に表層進展、0 - I I c多発病変を認めた。食道進行癌に対し2003年11月20日より5- FU 700mg/m2(day1-5)、NDP 130mg/m2(day6)を2クール、放射線療法を12月1日より計63Gy し、2004年6月の上部消化管内視鏡検査では食道癌の遺残は認めなかった。その際、下咽頭に基 部を持つ粘膜下腫瘍に対し超音波内視鏡検査を施行したところ、内部は均一な高エコーであった。 下咽頭原発の脂肪由来腫瘍の診断にて、同年7月6日内視鏡的切除術を施行した。組織学的には脂 肪腫で悪性所見を認めなかったことから、現在食道癌と合わせ経過観察中である。