日本消化器内視鏡学会甲信越支部

43.膵腺扁平上皮癌の1例

諏訪赤十字病院内科
三枝達也
諏訪赤十字病院消化器科
武川建二、原悦雄、丸山敦史、山村伸吉
諏訪赤十字病院内科外科
島田宏
諏訪赤十字病院病理
中村智次

症例は56歳女性。主訴は悪心,倦怠感,既往歴、家族歴に特記すべきことなし。現病歴は,平 成16年8月中旬頃より,悪心,全身倦怠感を認め,近医を受診し,著明な肝機能異常および胆石 を指摘され,当院紹介となった。入院時には心窩部に軽度の圧痛を認める以外に異常を認めな かったが,血液検査では著明な肝胆道系酵素の上昇を認めた。CEA,CA19-9は正常であったが, SCCは上昇していた。腹部超音波,CT検査では胆嚢腫大および胆嚢底部および頸部に結石を認め, また肝内胆管の拡張も認めた。肝門部から膵頭部領域に径5cmの均一な低吸収域を認めたが,主 膵管の拡張は認めなかった。翌日ERCPを施行したところ,十二指腸球後部に狭窄を認め,スコー プの通過が困難であった。膵管は特に狭窄は認めず尾部まで造影されたが,胆管は中部で不整に 狭窄を認め,胆嚢管は描出されなかった。経鼻胆道ドレナージ(ENBD)を行ない,状態が改善 した後,再度ERCPを施行した。十二指腸球後部の狭窄部は,内側に深い潰瘍を認めた。ENBDを ERBDに変更し,同時に胆管擦過細胞診および潰瘍から鉗子生検を行なった。胆汁細胞診,擦過細 胞診,組織生検すべてにおいて扁平上皮癌が見られ、腺癌成分は伴っていなかった。血管造影で は腫瘍濃染像は見られず,SMAに狭小化を認め腫瘍の浸潤が疑われたが,消化管および胆管に狭 窄を認めたため,手術を施行した。術中所見で,肝にも直接浸潤が見られたが,播種は認めず, 膵頭十二指腸切除および肝部分切除術(HPD)が施行された。切除病理所見では,腫瘍はほとん ど扁平上皮癌であり,やはり腺癌の要素はほとんど見られず,純粋な扁平上皮癌と考えられた。 膵腺扁平上皮癌は症例報告に加え,膵癌登録で調べると,100例以上の症例が見られるが,純粋 な扁平上皮癌は比較的稀と思われ報告した。