日本消化器内視鏡学会甲信越支部

42.主膵管の途絶を呈した膵内分泌癌の1例

新潟県立がんセンター新潟病院内科
本山展隆、山本幹、秋山修宏、稲吉潤、新井太、船越和博、加藤俊幸
新潟県立がんセンター新潟病院外科
土屋嘉昭
新潟県立がんセンター新潟病院病理
太田玉紀
新潟医療生活協同組合木戸病院内科
丸山弦

急性膵炎様の症状で発症し、内視鏡的逆行性膵胆管造影検査(ERCP)で主膵管の途絶を認めた 膵内分泌癌の1例を経験したので報告する。症例は、50歳、男性。既往歴には特記すべきことな し。2004年6月25日夕食後、上腹部にしめつけられるような痛みを自覚したため、翌26日近医 を受診した。上腹部に圧痛があり、腹部超音波検査では胆嚢の腫大を認められた。腹部CTでは膵 頭部に境界やや不明瞭な低吸収域を認められ、主膵管は体部から尾部にかけて拡張していた。急 性胆嚢炎として同院に入院し保存的治療を受け胆嚢の腫大は改善したが、上腹部痛は消失せず鎮 痛剤を使用していた。腹部MRIでは、膵頭部の主膵管に狭小化、途絶を認め、尾側の主膵管は拡 張し、下部胆管に狭窄を認めた。再検の腹部CTでは、膵頭部に低吸収域を認め、内部には一部嚢 胞様に見える部分も存在した。CEA、CA19-9は正常範囲内であったが、画像所見から膵癌を疑 われ、当院を紹介受診した。ERCPでは、主乳頭から約2.5cmの主膵管に途絶を認め、胆管は下 部から中部にかけて狭窄していた。腹部血管造影検査では、腫瘍はhypovascular tumorとして 認識され、膵頭部アーケードと背側膵動脈の分枝にencasementを認めた。手術直前の腹部CTで は、膵頭部の嚢胞性病変が大きくなっていた。随伴性の膵炎を合併した膵管癌と考え、8月16日 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。切除標本では、膵頭部に主膵管を閉塞するような 1.5×1.2×1.2cmの充実性病変を認め、その尾側にはpseudocystをともなった慢性膵炎を認め た。充実性腫瘍は、病理組織学的に内分泌癌と診断された。腹部CTをretrospectiveに検討する と、嚢胞性病変の乳頭側に1cm強の濃染する病変を認め、これが内分泌癌であったと考えられた。