日本消化器内視鏡学会甲信越支部

41.いわゆるcyst-in-cyst appearanceを呈したSolid pseudopapillary neoplasia(SPT)の一例

山梨大学医学部第1内科
末木良太、北原史章、高橋英、板倉潤、深沢光晴、佐藤公、榎本信幸
山梨大学医学部第1外科
高橋章弘、安留道也、板倉淳、藤井秀樹

症例は39歳、女性。2004年の検診の腹部超音波検査にて膵尾部に径5cmの嚢胞性腫瘍を指摘 された。近医受診し腹部CT検査および腹部MRI検査にて、Mucinous cystic tumor(MCT)を 疑われ、2004年7月14日に当科紹介受診。同8月3日精査加療目的で入院となった。腹部エコー にて膵尾部に径53mmの嚢胞性病変を認め、嚢胞壁には径13mmの乳頭状の隆起性病変を認めた。 超音波内視鏡検査では内腔に突出する径7mmほどの小嚢胞も見られ、いわゆるcyst-in-cyst appearanceと考えられた。腹部造影CTおよびMRI検査にて、嚢胞壁の厚さは不均一で造影効果 が見られ、内腔に突出する造影効果を認める隆起性病変も見られた。また腹腔内のリンパ節の腫 張は認められなかった。以上よりMucinous cystic tumorの術前診断にて、8月10日、当院第1 外科にて尾側膵切除術および脾臓摘出術を行った。肉眼所見では膵尾側に径4cmの厚い線維性被 膜を有する嚢胞性腫瘍を認め、嚢胞は全周性に内腔に突出する結節性病変からなっていた。内容 液はほとんどが出血と壊死物質で、小嚢胞は認められなかった。組織学的検索では、腫瘍は卵円 形の核と好酸性の胞体を有する比較的小型で均一な腫瘍細胞が充実性に増殖しており、偽乳頭状 構造を認めた。卵巣様間質は見られず、Solid-pseudopapillary neoplasia(SPT)の診断であっ た。本症例は、術前cyst-in-cystの所見等よりMCTと診断したSPT例である。両疾患は共に若年 から中年女性の膵体尾部に好発する低悪性度の膵腫瘍であるが、本例の様に術前診断が困難な例 もあり、若干の文献的考察を加えて報告する。