日本消化器内視鏡学会甲信越支部

40.膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)由来浸潤癌の1例

新潟県立がんセンター新潟病院内科
山本幹、本山展隆、秋山修宏、稲吉潤、新井太、船越和博、加藤俊幸
新潟県立がんセンター新潟病院外科
土屋嘉昭
新潟県立がんセンター新潟病院病理科
太田玉紀

IPMTとして約3年間経過観察され、手術により浸潤癌と診断された症例を経験したため、報告 する。症例は69歳、男性。1996年より食道癌にて当科で経過観察されていた。1998年2月、 腹部CTにて主膵管の拡張が認められ、ERCPにてIPMTと診断された。1999年4月、膵管鏡にて 膵管内乳頭腺癌が疑われたが、ブラッシング細胞診にてclass2であった。IPMT(主膵管型)と診断 したが、ブラッシング細胞診でclass2であり腺癌と診断できなかったこと、多発性の食道癌で EMR断端が一部陽性であったため、今後手術が必要となる可能性もあることより、充分な説明と 同意の上、膵腫瘍は経過観察の方針となった。2000年12月、上部消化管内視鏡検査にて早期胃 癌を指摘され、胃癌および膵腫瘍切除目的に2001年1月26日当院外科に入院した。2001年1月 30日、胃局所切除および体尾部膵切除術を施行した。病理組織学的には主膵管内に乳頭状腺癌を 認め、それに連続して膵実質に浸潤している管状腺癌が認められた。IPMT由来浸潤癌の診断必要 条件として(1)病理組織学的に浸潤部分を取り除いた場合にIPMTとして矛盾がないこと(2)病理組 織学的に膵管内非浸潤癌部と浸潤部との連続性がある、あるいは連続性があるとしても矛盾がな いことが挙げられる。本症例では臨床的には拡張した主膵管内に粘液と乳頭状腫瘍を認め、病理 組織学的にも主膵管内に乳頭状腺癌を認め、これに連続し管状腺癌が浸潤しており、IPMT由来の 浸潤癌と考えられた。