日本消化器内視鏡学会甲信越支部

39.EUS-FNAにより確定診断した膵頭部癌の1例

飯田市立病院消化器科
海野洋、岡庭信司、白籏久美子、山浦高裕、中村喜行
飯田市立病院臨床病理科
金井信一郎、伊藤信夫2

患者は85歳、女性。主訴は黄疸、腹部不快感。2004年4月下旬より腹部のつかえ感が出現した。 5月19日近医にて黄疸を指摘され、5月20日に当院に紹介となった。入院時腫瘍マーカーはCEA 3.1ng/ml, CA19-9 184.6IU/ml, であった。US, CTでは膵頭部に約3cmの腫瘤性病変を認め、 同病変による閉塞性黄疸と診断した。画像上膵頭部癌を強く疑ったがERC施行時の胆管生検・胆 管擦過細胞診・胆汁細胞診ではいずれも悪性細胞を証明できず、膵管造影は不能であったため経 乳頭的な膵管の病理検査は施行できなかった。治療方針の決定と可能な限り正確な診断をつけて もらいたいとの家人の希望もあり6月28日にEUS-FNAを施行した。(超音波ガストロビデオス コープOlympus GF-UCT240-AL5, 観測装置ALOKA-SSD-5500, ディスポーザブル吸引生検 針NA - 2 0 0H- 8 0 2 2 ( 2 2 G ) ) E US - F NAの採取検体にてwell differentiated tubular adenocarcinomaであった。
EUS-FNAで採取した検体は通常の擦過細胞診で得られる検体より細胞量が多く、組織診として の診断が可能であり、免疫染色を組み合わせることで膵腫瘍性病変の質的診断が向上する可能性 も示唆された。膵腫瘍において経乳頭的に検体が採取できない場合や採取した検体で悪性が証明 されない場合にEUS-FNAは病理学的診断に有用であると考えられた。