日本消化器内視鏡学会甲信越支部

36.自己免疫性膵炎を合併したクローン病の1例

山梨県立中央病院内科
伊藤祐子、小嶋裕一郎、松井啓、鈴木洋司、望月仁、廣瀬雄一、高相和彦

症例は44歳男性。40歳時から小腸・大腸型クローン病のため、某院で5ASA製剤および成分栄 養療法1200-1500kcal/日により経過観察されていたが、炎症所見の改善を認めないため当院紹 介となった。6MP 30mg/日投与開始後毎週アミラーゼを測定していたが、投与開始約3週間後に アミラーゼ412 IU/L、リパーゼ1805 IU/L、トリプシン4500ng/mlと膵酵素の上昇を認めた。 腹部超音波検査で膵腫大、CTでソーセージ樣の膵全体の腫大を認めた。6MP中止、メシル酸ガベ キサート投与、絶飲食にて膵酵素の改善を認めたが、10日後に膵酵素の再上昇を認めた。当初膵 炎の発症原因として6MPによる薬剤性膵炎を考えたが、膵酵素の再上昇を認めたこと、高IgG血 症、MRCPにて主膵管の狭細像が疑われたこと、ソーセージ様の膵全体のびまん性腫大を認めた こと、抗サイログロブリン抗体、PR-3ANCAが陽性であることから自己免疫性膵炎と診断し、膵 酵素の再上昇時からプレドニゾロン30mg/日を開始した。プレドニン投与直後から症状は軽快し 膵酵素の低下を認めた。現在プレドニン漸減中であるが、経過は良好である。
以上クローン病に自己免疫性膵炎を合併した稀な症例を経験したので、文献的考察を加えて報 告する。