日本消化器内視鏡学会甲信越支部

33.膵胆管合流異常症(胆管非拡張型)をともなった胆道癌の一例

丸子中央総合病院
松沢賢治、保坂成俊、丸山和敏
信州大学医学部消化器科内科
村木崇、小松健一、越知泰英

症例48歳、女性
主訴:右側腹部痛、背部痛
既往歴、家族歴:特記事項なし
現病歴:生来健康、2003年12月初旬より右側腹部痛を認め、2004年1月近医を受診した。肝機能障害を指摘されたが、画像で異常を認められなかったため、精査目的で2月5日当院を紹介された
。 入院時所見:身長155cm、体重53Kg、心窩部に軽度の圧痛を認める以外特記所見を認めなかった。検査所見:AST 104IU/l, ALT 164IU/l, ALP 551IU/l, γ-GTP 421IU/l, T-Bil 0.5mg/dl,CEA 6.8ng/ml, CA19-9 1588U/ml.
胸部レントゲンでは両肺野に小粒状陰影を認めた。腹部超音波、CTでは胆嚢の腫大と壁の肥厚を認めたが、胆管拡張はなく、膵臓にも所見がなかった。ERCPでは膵胆管合流異常を認め、胆管は拡張なく三管合流部あたりから不整狭小化していた。胆嚢は造影されず、細胞診でClassV(Adenocarcinoma)と診断された。さらに精査、治療の目的で、9日に信州大学消化器内科に転院となった。MRI、EUS、PETの所見で胆嚢管と総胆管の合流部に腫瘤状陰影、肝転移を認めた。IDUSではBmに外側高エコーの断裂を伴う腫瘤影、肝内胆管までびまん性に胆管壁の肥厚を認めた。肺の陰影については、胸腹部に液状壊死したリンパ節の多発を認め、mi l i a r ytuberculosisとの鑑別も必要となった。しかし、胃液培養で排菌を認めなかったこと、他に原発となる部位がなかったことから、胆管癌、肝、肺転移と診断しが、胆嚢管癌の可能性も考えられ胆道癌とした。AST 428IU/l, ALT 530IU/l, ALP 1641IU/l, γGTP 1422IU/l, T-Bil2.2mg/dlと上昇したため2月25日ステントを留置して3月1日退院となった。4月16日にはAST 254IU/l, ALT 200IU/l, ALP 3137IU/l, γ-GTP 1118IU/l, T-Bil 31.7mg/dlと上昇したが、本人の希望で以後は在宅での疼痛治療を中心におこない5月1日死亡した。