【症例】68歳、女性。平成15年7月、近医にて胆管拡張症と診断され、以後経過観察されていた。
平成16年8月、US・CTにて胆管拡張の増大を認めたため、当院紹介となった。USでは、肝門部
に胆嚢と接する径30x23mm、内部に乳頭状の充実部分を有する嚢胞性腫瘤を認めた。これが胆
管と交通し、腫瘤より胆管内に伸びる粘液様エコ−を認めた。一方、肝S5表面に径28x10mm
の辺縁不整な低エコ−腫瘤を認めた。この時点で、粘液産生胆管癌、肝転移が疑われた。CTでは、
肝門部の嚢胞性腫瘤内に淡い造影効果を有する充実成分が疑われた。肝S5表面には楔状の造影効
果を認めた。胆管造影では肝門部〜上部胆管内に粘液を認めた。また、上部胆管右壁から右肝管
壁に一部不整な圧排像を認めたが、その肝側胆管壁は平滑であった。胆管内IDUSでは嚢胞性腫瘤
が肝門部胆管と連続していたが、明らかな胆管内進展は認められなかった。経乳頭的胆道鏡では
肝門部胆管に粘液を排出する開口部を認めたが、周囲胆管壁は血管透見が良好であり、上皮内進
展はないと判断した。以上より、肝門部胆管が嚢腫状となった粘液産生胆管癌および肝転移と術
前診断し、拡大肝門切除+肝S5切除術を施行した。切除標本では肝門部に径37x23mmの嚢胞性
腫瘤を認め、その割面では内部に粘液が充満し一部に白色調の充実性腫瘍が存在した。また、左
右肝管合流部から右肝管に径7x3mmの腫瘍の開口部を認めた。一方、肝S5表面には径3〜5
mm大の白色結節の集簇を認めた。よって、粘液産生胆管癌、肝転移と診断した。
【まとめ】本例は肝外胆管に嚢腫状に発育した粘液産生胆管癌であり、発生を考える上で示唆に
富む症例と考えられた。IDUSおよび胆道鏡が術式決定に有用であった。