日本消化器内視鏡学会甲信越支部

31.肝内胆管細胞癌intraductal growth typeの1例

富士吉田市立病院外科
石川裕子、井澤伸一郎、小林純哉、石川仁高木淳彦
富士吉田市立病院内科
中川元希、山本泰漢、高橋正一郎
山梨大学医学部第2病理
村田晋一

今回我々は術前診断に苦慮した肝内胆管細胞癌の比較的稀とされるintraductal growth typeの1 例を経験したので報告する。患者は66歳の女性で、自覚症状はなく、検診で肝腫瘍を指摘された。 理学的に有意な所見はなく、検査データでは肝機能、ウイルスマーカー、腫瘍マーカーを含め明 らかな異常はなかった。単純CTでは肝S6に最大径3.6 cmの比較的境界明瞭でlow densityな腫瘤 を認めた。造影CTでは辺縁が濃染されるものの中心は造影されず壊死を反映していると思われ、 腫瘤より末梢の肝内胆管に著明な拡張を認めたため腫瘤の胆管内浸潤が疑われた。MRIでは同腫 瘤は内部がモザイク様構造を呈し被膜様構造を有しており、また胆管内腫瘍栓の存在が疑われた。 血管造影では右肝動脈よりのfeeding arteryが明らかとなり、腫瘍濃染像も認めた。以上より肝 細胞癌を最も疑ったが、針生検では高から中分化な異型腺管構造を示す腺癌の診断であった。転 移性腫瘍も疑われたが他に原発を疑う病変がなく、開腹術を施行した。手術は胆管細胞癌の可能 性を考え、肝右葉切除・胆摘・郭靖を行った。切除標本で肝S6に最大径約5 cmの被膜を有し内容 は黄色で乳頭状に増生する腫瘍を認めた。病理所見では、腫瘍は被膜を形成し結節状で、異型腺 管の増生が主体をなし一部で乳頭状構造を認め、腫瘍細胞の核は腫大しクロマチンが増量してお り高分化腺癌の像であった。H1、eg、fc(+)、fc-inf(-)、sf(+)、s0、n0、vp0、vv0、va0、b(+)、 im(-)、sm(-)で、胆管細胞癌のintraductal growth typeと言われるものであった。本疾患は比較 的稀とされ、また画像所見上も興味深い症例と思われたため、若干の文献的考察を加え報告する。