日本消化器内視鏡学会甲信越支部

30.経肝静脈的肝腫瘍生検が診断に有用だった肝内胆管癌の1例

信州大学医学部附属病院消化器内科
小見山祐一、小松健一、村木崇、濱野英明、新倉則和、越知泰英、吉澤要、清澤研道1
豊科赤十字病院消化器科
小見山祐一、小松健一、村木崇、濱野英明、新倉則和、越知泰英、吉澤要、清澤研道

症例は56歳、男性。主訴は腹痛、体重減少(半年間で10kg)。2003年12月10日頃より右側 腹部痛が出現し、糖尿病で通院していた前医を受診したところ、血液検査にて肝胆道系酵素の上 昇、腹部CTにて肝右葉の腫瘍と腹水が認められ、2004年2月2日に精査・加療目的にて当院入院 となった。当院で再検したCTでは肝右葉に分葉状の8cm大の腫瘍が認められ、造影後期相で辺縁 を中心に造影効果が認められた。肝表に達する部分では癌臍形成も認められた。周囲には同様の 結節性病変が多発しており、肝門部・傍大動脈・縦隔リンパ節の腫大も認められた。MRIでは腫 瘍はT1強調像で低信号、T2では高信号を呈し、腫瘍内には既存の動脈・静脈・門脈が残存してい た。比較的太い胆管も腫瘍中央部まで認められたが、末梢胆管の拡張は認めなかった。尚、ERC を試みるも胆管造影出来なかった。PETでは肝腫瘍辺縁に異常集積を認めたがリンパ節への集積 は認められず、Gaシンチではリンパ節への集積は認められたものの肝腫瘍への集積は認められな かった。肝内転移を伴う胆管細胞癌等の原発性肝腫瘍以外に転移性肝腫瘍、更にリンパ節腫大の 所見を考慮し悪性リンパ腫も鑑別診断として考えられた。本例は若年であったため積極的に化学 療法を施行することとなったが、各種画像所見がどの診断としても典型的ではなかったため、病 理学的診断が必要と考えられた。腹水・出血傾向のためエコーガイド下肝腫瘍生検が困難であっ たこと、繰り返した腹水細胞診では腫瘍細胞は認められなかったことなどから経肝静脈的腫瘍生 検を施行した。肝生検組織では異型に乏しい細胞よりなる小型腺管が不規則に豊富な間質結合織 内に散在性に少数認められ、硬化型肝細胞癌、類上皮性血管内皮腫などが鑑別に考えられたが、 サイトケラチン7、19などの免疫染色が陽性を呈したため画像所見と併せて腫瘤形成型の胆管細 胞癌と診断した。また、多発性リンパ節腫大に関しては縦隔リンパ節のEUS-FNAを行ったが、腫 瘍成分は認められなかった。以上の結果を踏まえ肝内胆管癌に対する全身的化学療法を施行した。