日本消化器内視鏡学会甲信越支部

29.転移性肝腫瘍に対するラジオ波焼灼術の検討

佐久総合病院内科
古武昌幸、高松正人、比佐岳史、堀田欣一、友利彰寿、宮田佳典、小山恒男
佐久総合病院外科
大久保浩毅

【緒言】転移性肝腫瘍に対する治療としては肝切除術が第1選択とされているが,切除後も異所性 の再発は多く,繰り返しの開腹手術はQOLを損なう原因ともなっていた.当院において,転移性 肝腫瘍に対しラジオ波焼灼術を施行した症例の検討を行ったので報告する.【対象と方法】当院 では,肝腫瘍に対する経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)を2000年9月から2004年9月末まで,延べ 88症例,142結節に行った.このうち転移性肝腫瘍は9症例19結節である.9症例の原発巣の内 訳は,大腸癌4例,食道癌2例,胃癌1例,十二指腸GIST 1例,膵内分泌腫瘍1例である.全例肝 硬変は認めなかった.平均年齢は58.4歳(52-72歳),男女比7:2,19結節の平均腫瘍径は 1.9cm(0.8-3.8cm)であった.全例RTC,RF 2000 Generator,LeVeen needleを使用,超 音波ガイド下にRFAを行った.効果判定は2,3日後の造影CTまたは造影MRIにて行い,十分な marginをとって腫瘍が焼灼されていない場合は追加治療を行った.【成績】平均観察期間230日 で無再発5例,再発4例,再発例の内訳は肝内異所性再発3例,原発巣局所再発1例,肝外の転移再 発2例,(以上重複あり)で治療部位の局所再発は認めなかった.肝内異所性再発例に対しては追 加RFAを行ったが、原発巣再発、肝外再発を合併している場合にはRFAを行わなかった。無再発 例の検討では,化学療法を先行させていた例が5例中4例,化学療法に対する反応はPRまたはNC であった.治療9例の平均入院期間は9日(5-15日),治療回数は平均1.5回(1-2回),9例中7 例に硬膜外麻酔を併用,硬膜外麻酔使用例では治療中の疼痛はごく軽度のみであった.【考察】 転移性肝腫瘍では肝障害がない例がほとんどで大きな範囲を焼灼することができ,十分なmargin をとることで局所再発を防ぐことが可能である.治療の侵襲は小さく,異所性再発が多い転移性 肝腫瘍に対する治療としては,十分なQOLを保ちうる方法と考えられた.【結語】転移性肝腫瘍 に対するRFAは肝切除に匹敵する局所制御能を持ち,腫瘍径が小さい場合有力な治療法となりう る.