日本消化器内視鏡学会甲信越支部

26.B型、C型肝炎ウイルスマーカー陰性で、慢性肝病変を伴わない肝細胞癌の一例

済生会新潟第二病院消化器科
島守寿樹、水野研一、冨樫忠之、渡辺孝治、関慶一、石川達、太田宏信、吉田俊明、上村朝輝
済生会新潟第二病院外科
坪野俊広
済生会新潟第二病院放射線科
武田敬子
済生会新潟第二病院病理検査科
石原法子

症例は72歳男性。【既往歴】手術歴なし、輸血歴なし、アルコール摂取歴なし、喫煙歴なし。 【現病歴】2004年5月、糖尿病の精査で施行した腹部超音波にて肝S6に5cmの腫瘤を指摘され、 2004年6月2日、精査のため入院となった。【現症】特に異常なし。【検査所見】〈血液生化 学〉AST 32 IU/l、ALT 12 IU/l、ALP 242 IU/l、LDH 223 IU/l、γ-GTP 29 IU/l、AFP 89.3 ng/ml (レクチン分画0.90)、PIVKA-2 613 mAU/ml、CEA 2.7 ng/ml、CA19-9 19.12 U/ml、HBsAg(−)、anti-HBc(−)、HBV-DNA(−)、anti-HCV(−)。CT検査では肝S6に 造影早期で低吸収域に高吸収域が混在するモザイク状を呈し、造影後期に一部被膜様濃染を示す 5cmの腫瘤を認めた。MRIではT1強調画像にて低信号、T2強調画像にて中等度高信号内に高信 号混在。造影後期に腫瘤の内側部分に被膜様濃染を認めた。腹部血管造影でも早期濃染を認め、 造影やや遅延する腫瘤として認められた。【経過】画像所見は肝細胞癌として典型的ではなく、 胆管細胞癌(もしくは混合型)、肝血管腫、転移性肝癌などとの鑑別は困難であった。当院外科 にて肝後区域切除術施行し、病理診断にて肝細胞癌の所見であった。非癌部肝組織には慢性肝炎 の所見はなく、脂肪変性もほとんど認められなかった。なお、症例は腫瘍マーカーも正常化し、 現在まで再発なく経過良好である。HBVおよびHCVマーカーが陰性で慢性肝病変を伴わない肝細 胞癌の一例であり、肝発癌を考えるうえで興味深い症例と考え、若干の考察を加え報告する。