日本消化器内視鏡学会甲信越支部

24.デスフェラール、サイクロスポリンにて加療中の再生不良貧血合併C型慢性肝炎の1例

更埴中央病院内科
宮林千春、金辰彦、小野知巳、窪田芳樹
群馬大学医学部第3内科
塚本憲史

症例は49歳、女性。1968年(13歳)頃白血球減少、血小板減少にて群馬大学を受診、再生不良 性貧血の診断でプレドニンの投与(1975年:20歳まで)および頻回輸血(1987年まで)を受けて いる。1982年(28歳)以降は内服なし。血色素10〜12g/dl、白血球1500/μl、血小板5〜10 万/μlで肝機能正常であったが、2001年5月頃より肝機能の増悪を認め、C型慢性肝炎と診断さ れ、(自宅に近い)当科へ紹介受診。初診時血色素13.0、白血球1100、血小板7.6万、GOT 79 U/L、GPT 141 U/L、LDH 273 U/L、HCV抗体陽性(genotype 1B、570 KIU/ml)で、ウルソ 600mg内服および強ミノC静注にて加療していた。肝機能の変動を認めたため瀉血治療を考慮し たが、汎血球減少症の悪化が予想されたためキレート剤による除鉄を検討、2002年10月22日よ りデスフェラール(250mg/週1回点滴:11回、以後500mgに増量)投与を開始した。尿中鉄排泄 は一時的に増加したが、肝機能の改善やウイルス量の減少を認めず、むしろ血小板低下をきたし たため副作用の可能性を考え、2003年3月11日中止した。しかし血球減少は改善せず、再生不良 性貧血の増悪と考え、2004年4月20日よりサイクロスポリン300mgを開始した。4ヶ月間の投 与にて一時的に肝機能の改善とウイルス量の減少(GOT 38、GPT 24、HCVRNA量5未満)を 認めたが、8月26日現在、GOT93、GPT 81、HCVRNA量660と上昇している。血算には変化 なく、今後の治療に苦慮している。再生不良性貧血の治療とはいえ、C型慢性肝炎患者に対するサ イクロスポリンの投与はまだ一般的ではなく、興味深い症例と考え報告する。