日本消化器内視鏡学会甲信越支部

23.PEG-IFN投与中に腎障害をきたしたC型慢性肝炎の1例

山梨大学医学部第1内科
門倉信、坂本穣、俵章夫、雨宮史武、板倉潤、斉藤晴久、岡田俊一、榎本信幸
山梨大学医学部第3内科
井上浩伸、川口章夫、原口和貴、小林哲郎
市立甲府病院
井上浩伸、川口章夫、原口和貴、小林哲郎

【症例】71歳男性、C型慢性肝炎のため経過観察中であったが、IFN導入目的で入院となった。 糖尿病はないが、高血圧のためベシル酸アムロジピン5 mg/day、カンデサルタンシレキセチル8 mg/day内服中であった。入院時WBC 4600/μl、RBC424万/μl、Hb13.9g/dl、Plt14.4/μl、 TP 7.6g/dl、Alb 4.3g/dl、ZTT 14.9KU、TTT 8.3KU、T.Bil 0.5mg/dl、AST 34 IU/l、 ALT 29 IU/l、BUN 21mg/dl、Cr 1.36mg/dl、HCVAb(+)、HCVgenotype 1b、HCV RNA 15.0 KIU/ml、ISDR変異数5であり、肝生検の結果はF2、A2であった。このため、1b低 ウイルス量で、高齢であることを考慮し、2004年1月21日より、PEG-IFNα2a 180μg/dayを 用いて治療開始した。治療開始後1週間でHCV RNAは陰性化したものの、8週ごろから腎機能悪 化を認め、投与開始14週目にはBUN 25mg/dl、Cr 2.07mg/dlとなったためIFNを中止した。 しかし、中止後も腎機能障害は悪化し、5週後には尿潜血(+)、尿蛋白(-)、BUN 39mg/dl、 Cr 3.09mg/dl、血圧コントロールも不良になったため、当院腎臓内科で腎生検を施行した。光顕 では、糸球体には著変なかったが、間質にはfocalにリンパ球浸潤を認め、尿細管では、リンパ球 浸潤部位に一致して基底膜の破綻を認めた。尿細管腔の一部では尿細管上皮細胞の剥脱が存在し、 間質性腎炎を示唆する所見が認められたが、IFNの関与は不明であった。腎機能はIFN中止後、経 過とともに軽快した。【考察】本例の腎障害はPEG-IFN開始後に発症し、中止ともに改善したこ とからIFNに伴うものと考えられた。この多くは可逆性であるが、急速に進行する症例も存在し、 潜在的に腎機能障害を持った症例に対してIFN投与を行なう際には十分な注意が必要であると考え られた。また、IFNにpolyethylene glycolを結合させたPEG-IFNは、利便性や副作用が軽微で ある反面、半減期が長く、一旦副作用が出現した場合には慎重な経過観察が必要と考えられた。