日本消化器内視鏡学会甲信越支部

22.アロプリノールによるHypersensitivity syndrome を呈した劇症肝炎の1例

諏訪赤十字病院消化器科
武井英樹、丸山敦史、原悦雄、武川建二、山村伸吉

症例は32歳男性、主訴は皮疹、眼球黄染、食欲不振である。既往歴、家族歴に特記事項無し。 現病歴は2004年2月初めから高尿酸血症のためアロプリノール内服を開始した。3月初めより全 身倦怠感、食欲不振を自覚、3月4日発熱を認め、前医でインフルエンザ症と診断されオルセタミ ビル投与を施行された。3月6日全身に粟粒大の小紅色丘疹が出現し服薬中止、3月8日眼球黄染に 気付き前医再診、精査加療目的に当科紹介となった。現症では意識清明、体幹四肢に粟粒大の紅 色小丘疹、結膜に黄疸、腹部で鎖骨中線上1横指,胸骨中線上2横指, 弾性軟,辺縁鋭, 表面平滑な肝 臓を触知、圧痛を認めた。下腿浮腫陰性、羽ばたき振戦陰性であった。入院時検査所見ではPT(%) 40, AST 2380, ALT 3170, T.Bil 11.69と高度の肝機能障害を認め、重症肝炎と診断した。各 種肝炎ウイルスマーカー陰性で自己免疫性肝炎も否定的で服薬歴より薬剤性肝炎が疑われた。第4 病日に2度肝性脳症が出現し急性型劇症肝炎移行と診断した。ステロイドパルス療法、血漿交換、 持続血液濾過透析を施行し4度肝性脳症から2度脳症まで覚醒した。肝移植も念頭に置いて第6病 日に信州大学附属病院転院となった。アロプリノールに対する薬剤性リンパ球刺激試験(DLST)陽 性であったがHHV-6は抗体、DNAは共に陰性であった。以上よりアロプリノールの関与が強く 疑われる症例で若干の文献的考察を交えて報告する。