日本消化器内視鏡学会甲信越支部

21.Ganciclovirによる治療を試みた成人サイトメガロウイルス肝炎の一例

独立行政法人国立病院機構長野病院消化器科
張淑美、中辻良幸、藤森一也、長屋匡信、滋野俊
独立行政法人国立病院機構長野病院研究検査科
前島俊孝

症例は30歳男性。生来健康であったが、平成15年3月初めより、咳嗽、発熱、倦怠感が出現し、 近医にて肺炎を疑われ、抗生物質等処方されていたが、軽快しないため3月10日当院呼吸器科に 紹介入院となった。入院時、胸部レントゲン写真上、肺炎の所見は軽微であった。入院時より、 肝機能障害を認め、次第に増悪したため(AST/ALT=1429/1080U/L)、消化器科転科となった。 38℃〜39℃の発熱が持続し、乾性咳嗽、倦怠感も持続していた。表在リンパ節、肝臓、脾臓は触 知していない。強力ミノファーゲンCの静脈注射を継続し、肝機能は次第に改善したが、 CRP=3.0〜10.0mg/dL、WBC=6000〜25000/μLを変動したため、また、CMV IgM抗体= 1.88(N<0.80)、CMV IgG抗体=3.7(N<2.0)と上昇を認めたため、4月9日に、エコー下肝 生検を施行。肝組織内に封入体あるいは肉芽腫を認めず、肝小葉内に軽度の炎症性細胞を認める のみであった。ガンマグロブリン製剤が無効であったため、4月11日より、Ganciclovir(デノシ ン)250mgの点滴静注を1日2回、2週間施行した。これにより、解熱し、肝機能は改善した。 可溶性IL-2レセプターは9540U/mLから430U/mLへ低下した。なお、CMV抗原およびCMV DNAは陰性、HIV-1,2抗体およびHTLV-1抗体も陰性であった。4月27日退院となったが、経過 中、CMV IgG抗体は2.2(3/13)→3.7(3/27)→3.2(4/21)→2.4(5/22)と常に低値であった。 CMV IgG抗体の低値が持続し、Ganciclovirによる治療が有効であった成人サイトメガロウイル ス肝炎の一例を報告した。