日本消化器内視鏡学会甲信越支部

18.特異な内視鏡像を呈した直腸子宮内膜症の1例

新潟県立吉田病院内科
有賀諭生、中村厚夫、八木一芳、関根厚雄

【症例】16歳、女性。【主訴】下腹部痛。【既往歴】気管支喘息。【月経歴】初経12歳、周期は 28から30日。【現病歴】以前より月経の終わり頃に下腹部から臀部にかけて疼痛を認めて、市販 の内服薬を内服していた。平成15年4月16日より月経開始、4月17日より下腹部痛が出現、嘔気、 嘔吐を認め、食事困難となる。その後下腹部痛が増強し、4月18日当院救急外来受診、入院と なった。【入院後経過】現症は下腹部圧痛のみで腫瘤は触知せず。血液検査は白血球14900と上 昇、血清生化学は肝機能、腎機能、電解質をはじめ全て正常、CA125は53と上昇。腹骨盤部CT にて双角子宮及び直腸内に最大径6cm大の腫瘤を認めた。内部の一部が造影されるが全体的には 造影されず粘膜下出血が疑われた。大腸内視鏡検査(以下CF)では、Rsに内腔をほぼ完全に占拠し、 発赤調の緊満した粘膜下腫瘍様の腫瘤を認め、口側への内視鏡の挿入は困難であった。4月20日 に月経はほぼ終了し、CF上、腫瘤は徐々に縮小傾向を認めた。MRIではRsからRaにかけて 10cm×5cmの高信号と低信号が混在し粘膜下血腫、肉腫が疑われた。動静脈奇形、血管肉腫か らの出血などの鑑別のため血管造影施行したが異常所見なく、IMAから腫瘤への血管の流入は認 めなかった。疼痛が月経と関連していると思われ、経過から腸管子宮内膜症が強く疑われたため、 5月1日より当院産婦人科にて偽閉経療法(リュープロレリン1.88mg皮下注)施行、その後のCT、 CFにてさらに腫瘤の縮小を認めた。CFでの生検では非特異的腸炎のみであり、粘膜下組織は認め られなかった。計3回の偽閉経療法後の8月4日のCTでは直腸の粘膜下血腫はさらに縮小し2cm大 となった。【結語】直腸子宮内膜症の1例を経験した。当初のCT、MRI、CFの所見からは積極的 に直腸子宮内膜症を疑わなかったが、臨床経過及びCA125の高値から直腸子宮内膜症と診断、偽 閉経療法により腫瘤の縮小を認めた。子宮内膜症の発生部位として直腸、結腸は1%以下とされて おり、稀な症例と思われたので報告した。