日本消化器内視鏡学会甲信越支部

17.便潜血陽性で発見されたS状結腸の腫瘍形成性子宮内膜症の1例

山梨県厚生連健康管理センター
塚田登思美、高橋ひふみ、細田健司、渡辺一晃、加藤淳也、大野秦司、依田芳起、小林一久
山梨厚生病院外科
山寺陽一、堀込政利

症例は32歳女性。2004年1月13日の職場検診受診時、自覚症状なく、血液生化学検査にも特 記すべき異常なし。その際の便潜血反応が2日とも陽性のため2月10日精査目的で当センター内科 外来受診となった。2月27日注腸X線施行し、S状結腸にくるみ大の圧排所見があった。大腸鏡で は、S状結腸に壁外性の圧排があり、スコープが通過困難であり、粘膜はやや浮腫状で、一部表面 に糜爛を伴っていた。生検の結果は、groupIの所見であった。腹部超音波、CT、MRIを施行し、 腹部超音波、CTでは腫瘤は同定されず、造影MR検査では、S状結腸後壁に5×20mmのT1強調 で低信号、T2でも不均一な低信号で、造影後に不均一に造影されたことから、血流を有する腫瘤 性病変と診断された。子宮とS状結腸の間には脂肪層が保たれていた。悪性の可能性もあるため、 5月13日に手術を行い、迅速病理診断では子宮内膜症であり、悪性像はなかった。腸管子宮内膜 症は、増加の傾向にあり、多くは自覚症状を伴うが、本症例のように自覚症状がなく、便潜血陽 性で発見された症例は少なく、文献的考察を含めて報告する。