日本消化器内視鏡学会甲信越支部

15.化学療法が著効した直腸悪性リンパ腫の一例

信州大学医学部消化器内科
井上勝朗、伊東一博、横沢秀一、金子靖典、村木崇、三澤倫子、小見山祐一、進士明宏、小松健一、浜野英明、新倉則和、越知泰英、清澤研道
信州大学医学部消化器内科内視鏡診療部
赤松泰次、小松健一
丸子中央総合病院内科
松澤賢治

症例:69歳女性。2004年1月下旬より血便が出現し、2月に近医で大腸内視鏡検査を施行され た。その際、直腸に隆起性病変を認め、生検にてmalignant lymphoma, diffuse large B cell typeと診断され、治療のため3月9日当科入院となった。当科にて大腸内視鏡検査を再検し、直腸 Rbに径30mm大の頂点に浅い潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様の隆起性病変と、径4mm大の副病変を認 め、生検にてmalignant lymphoma, diffuse large B cell type(high grade componentを伴っ たMALT lymphoma)と診断された。超音波内視鏡検査では、内部均一なhypoechoic massとし て描出され、主病変では第4層は保たれていたが、副病変については第4層と連続しており、また、 直腸壁外に径10mm弱のリンパ節を認めた。他の画像診断では直腸周囲および下腸間膜動脈沿い にリンパ節腫大を認めたが、その他の部位にlymphomaの浸潤を認めず、stage IIと診断した。4 月1日からrituximab-CHOP併用療法を開始し、3クール終了時に大腸内視鏡検査を施行したとこ ろ、直腸の隆起性病変は消失し、超音波内視鏡検査でも病変を指摘できなかった。また、瘢痕部 位より生検を行ったが、lymphomaの残存は認めなかった。6クール終了後の大腸内視鏡検査で もlymphomaの所見は認めず、腹部CTでも直腸周囲のリンパ節腫大は消失していた。完全寛解と 判断し、7月31日退院となり、現在経過観察中である。