日本消化器内視鏡学会甲信越支部

14.内分泌細胞癌への分化を示した直腸LST-G 結節混在型の1例

長野市民病院消化器科
立岩伸之、長谷部修、竹花直樹、今井康晴、長田敦夫
長野市民病院外科
宗像康博、関仁誌、宮川雄輔、酒井宏司、渡邉隆之
長野市民病院病理
保坂典子

症例は50歳,男性。便潜血反応陽性のため,近医にて注腸造影検査を施行したところ直腸に隆 起性病変を認めたため,2004年3月9日に当科紹介となった。大腸内視鏡検査にて直腸Raに直径 約25mmのLST-G 結節混在型を認めた。大部分がIIIL型pit patternであり一部隆起の高い部分に IV型pit patternを認めたが,V型pit patternは見られず,積極的にsm浸潤を示唆する所見はな かった。4月1日にEMR(2分割切除)を施行した。carcinoma in adenoma, sm, ly+, v+, m-ce(-), sm-ce(+)であった。主体はtubulovillous adenomaであり,隆起の高い部分の表層付近に中分化 型腺癌を認めた。またその深部には小型の腫瘍細胞の充実性増殖を認めた。免疫染色ではNSEお よびNCAMが陽性であり,内分泌細胞癌と診断した。追加外科切除を予定したが,その後の全身 検索にて多発肝転移を認めたため,現在CPT-11, CDDPによる化学療法を施行中である。なお局 所の遺残再発は認めていない。大腸内分泌細胞癌は,その発生頻度が全大腸癌の0.2〜1%と非常 に希な疾患であり,内分泌細胞癌の発生を考える上で興味深い症例と思われたため報告する。