日本消化器内視鏡学会甲信越支部

13.直腸内分泌細胞癌の1例

国立病院機構松本病院外科
清水郁夫、小池祥一郎、松本裕道、江口隆、前野一真、 中村俊幸、岩浅武彦1
国立病院機構松本病院研究検査科病理
中澤功

大腸内分泌細胞癌は極めてまれであり、また早期から転移をきたしやすく悪性度が高い。症例 は46歳、男性。2004年3月から肛門部異和感と粘液便をきたすようになった。6月11日近医を 受診し直腸腫瘍を疑われ当科に紹介され精査加療目的に入院となった。大腸内視鏡では歯状線か ら3〜4cmの前壁に2/3周を占める2型腫瘍を認め、生検では低分化型腺癌が疑われたが、追 加して施行した免疫染色の結果cytokeratin(+), Chromogranin A(+), Synaptophysin(+), NCAM(+)でありendocrine cell carcinomaと診断された。腹部CTでは直腸周囲脂肪織の densityが上昇し、1群リンパ節に腫大を認めたが、肝転移は認めなかった。CEA・CA19-9およ び血中5-HIAA・ガストリンはいずれも基準値内であった。6月21日腹会陰式直腸切断術を施行 した。病理組織診断はcarcinoma of rectum, Rb, 8.0×6.5cm, type2, a1, ly2, v2, n1(+), ow(-), aw(-), ew(-)、stage IIIAであった。根治切除であったが本腫瘍の悪性度を考慮し術後 CDDP+CPT-11による化学療法を3コース追加した。現時点で再発や転移の出現は認めていない。 若干の文献的考察を加えて報告する。