日本消化器内視鏡学会甲信越支部

12.潰瘍性大腸炎に関連した十二指腸・回腸炎にエロモナス感染性腸炎が合併したと考えられた1例

新潟大学教育研究院医歯学系消化器内科学分野
五十嵐理香、佐藤明人、本間照、小林正明、 杉村一仁、東谷正来、横山純二、石本結子、青柳豊
新潟大学教育研究院医歯学系分子病態病理学分野
佐藤明人、味岡洋一

潰瘍性大腸炎に対する大腸亜全摘術後に十二指腸、回腸にびまん性炎症を伴った症例を経験し た。激しい水様性下痢を来たし、便培養からエロモナスが検出されたため、抗生剤投与したとこ ろ菌は陰性化し、水様性下痢は改善した。しかし、腹痛や炎症反応は改善せず、ステロイドにて ようやく軽快した。潰瘍性大腸炎に関連した十二指腸、回腸炎と、エロモナス感染性腸炎が合併 した極めて稀な症例と考えられた。症例は28歳男性。20歳時発症、ステロイド依存性のため緩解 維持が困難で2004年1月、結腸亜全摘術が施行された。切除標本は全大腸炎型潰瘍性大腸炎で あった。4月から下痢、腹痛が著明となり、GIFにて十二指腸球部から下行脚にかけて連続性びま ん性発赤浮腫状粘膜を認め、潰瘍性大腸炎に伴う十二指腸炎と診断された。PSL40mg投与された が、水様性下痢、腹痛は増悪し当科転院となった。38℃台の発熱、3000ml/日以上の激しい水様 性下痢が持続、心窩部痛、嘔気を訴えていた。転院時の便培養からエロモナスが検出されたため、 PSL減量し、LVFX、CAZを投与した。胃液、十二指腸粘膜生検標本から有意菌は検出されず、 H.pyloriも陰性であった。十二指腸病変に対し5ASA1500mgを粉砕投与、PPIを併用した。抗生 剤投与開始後、便培養陰性化し、10日目からは便量が2000ml以下となった。しかし心窩部痛や 発熱は改善せず、炎症反応も持続。GIFで十二指腸の発赤浮腫は軽減していたが、球部、下行脚の 多発小糜爛は残存。CFで盲腸、終末回腸に小糜爛が多発し、回腸絨毛は浮腫状であった。直腸粘 液瘻には小糜爛が多発する発赤浮腫状粘膜を認めた。PSL 80mg投与開始したところ、翌日から 腹痛は軽快し、下痢、発熱も改善。PSL増量3週後には、内視鏡にて十二指腸および盲腸、終末回 腸の所見はほぼ消失したが、直腸病変は不変であった。