日本消化器内視鏡学会甲信越支部

10.ステロイド大量投与が有効であったHenoch-Schonlein purpuraの1例

佐久総合病院
森田周子、小山恒男、宮田佳典、友利彰寿、堀田欣一、竹内学、米湊健、田中雅樹、比佐岳史
佐久総合病院内科
古武昌幸、高松正人

Henoch-Schonlein purpura(以下HSP)は全身性の急性アレルギー性血管炎で、70-80%の 症例で消化器症状を認める。今回我々は紫斑出現前に腹痛と下血で発症し、ステロイドの大量投 与が有効であったHSPの1例を経験したので報告する。症例は62歳女性で平成16年6月に腹痛と 下血が出現した。第4日に近医にて感染性腸炎と診断され、抗生剤にて軽快せず第6日に紹介入院 となった。入院時、右下腹部に圧痛を認め、WBC 14600/μl、CRP 22.6mg/dlと炎症反応が亢 進していた。CTでは造影効果を有する終末回腸の壁肥厚と腸間膜リンパ節腫大を認めた。上部消 化管内視鏡では食道・胃に異常所見はなかったが、十二指腸下行脚に多発するびらんと粘膜内出 血を認めた。下部消化管内視鏡で大腸に異常所見はなかったが、終末回腸に粘膜下出血と白苔を 伴うびらんを全周に認めた。十二指腸生検で粘膜下層に好中球の核破砕像を伴う小血管炎を認め、 臨床経過と内視鏡所見を併せてHSPと診断した。第14日からプレドニゾロン40mgを開始したが 下血と血尿が増悪したため、第16日からメチルプレドニゾロン500mgを3日間投与したところ、 第17日から腹痛は消失、血便・血尿も改善し、以後順調に回復した。第18日に両下腿に軽度の紫 斑が出現したが第20日には消失した。第28日には経口摂取を開始し、プレドニンを漸減したが増 悪なく、第57日に退院となった。HSPは紫斑が先行する典型的な症例では容易に診断できるが、 10-20%の症例は消化器症状が紫斑に先行するため診断に苦慮する事がある。本症例においても 腹痛・下血で発症し、当初紫斑は認めなかったが、しかし内視鏡検査が診断に有用であった。ま た本症例では通常量のステロイド投与は無効であったが大量投与は有効であり、ステロイド通常 量で無効なHSPでは大量投与を試みるべきである。