日本消化器内視鏡学会甲信越支部

9.多彩な消化管病変を伴ったアレルギー性紫斑病の一例

長野中央病院消化器内科
松村真生子、小島英吾、大石美行
長野中央病院
束原進

今回われわれは,下腿の点状紫斑に加え,胃・十二指腸・空腸・回腸・大腸にわたり多彩な消 化管病変を伴ったアレルギー性紫斑病の一例を経験したため報告する.【症例】症例は62歳男性. 平成16年6月29日より食欲減退,腹満感,下腿の発疹,立ちくらみが出現し7月1日に当院に受診 された.最近の上気道感染様症状は自覚していない.CT検査にて十二指腸下降脚〜近位空腸領域 の壁肥厚像が見られたため,精査・加療目的にて入院となった.7月2日に上部内視鏡検査を施行 したところ,食道・胃には特筆すべき所見はなく,十二指腸下降脚に著明な発赤・びらん・浮腫 を認めた.水平脚にも同様の所見がみられたが,一部は瘢痕化しており軽快傾向を認めた.下部 内視鏡検査では,終末回腸に点状の小出血斑を認めた.バウヒン弁は発赤し,盲腸からS状結腸ま で点状あるいは斑状の出血斑がみられた.血液検査所見では,IgAが445mg/dlと上昇し,第13 因子は59%と低下していたが,腎機能は正常であった.下腿発疹部の生検ではleukocytoclastic vasculitisの所見を認め,上記臨床症状と合わせアレルギー性紫斑病と診断した.7月13日より3 日間プレドニゾロン50mgの内服を開始したところ,腹部症状は速やかに改善した.一方,下腿の 発疹はその後も消長を繰り返していた. 7月23日に経過観察のため再度上部内視鏡検査を施行し たところ,十二指腸病変は瘢痕化していたものの,新たに胃小弯側全域に発赤斑が散在していた. 自覚症状は軽快していたため,外来にて保存的に経過観察をしていたところ,下腿の発疹は徐々 に消失していった.また,約1ヵ月後の上部内視鏡検査では胃病変も軽快した.【考察】アレル ギー性紫斑病の際に種々の消化管病変が認められることは珍しくないが,一般にステロイドの投 与によって速やかに改善する.しかし同一症例において,ステロイド投与に前後し広範な消化管 に異時性・異所性に病変が出現した報告は稀であり,示唆に富むものと考えられた.文献的考察 も踏まえ報告する.