日本消化器内視鏡学会甲信越支部

8.上部消化管内視鏡を用いた生検で術前診断した空腸癌の1例

1市立甲府病院外科
駒津和宜、加藤邦隆、望月靖弘、宮澤正久、巾芳昭
1市立甲府病院内科
大高雅彦

空腸腫瘍は術前診断として内視鏡的生検が困難な疾患であるが、最近では小腸内視鏡が有用と の意見がある。しかし小腸内視鏡の普及率は低く、標準的手技とはなりえていないのが現状であ る。今回われわれは内視鏡的イレウスチューブ挿入システム(イレウスエイド)を併用した胃内 視鏡により上部空腸の腫瘍に対して生検を行い、空腸癌と術前診断した1例を経験したので報告す る。症例は82歳女性。2004年7月下旬より心窩部痛・嘔気・嘔吐が出現したため近医を受診した ことろ、超音波検査で空腸に限局性壁肥厚を指摘され、空腸腫瘍の疑いにて当科紹介となった。 初診時、心窩部に圧痛を認めるのみで腫瘤は触知しなかった。また、当院で施行した超音波検査 では明らかな異常を指摘できなかった。CTでは胃から十二指腸にかけて著明な拡張とその肛門側 で口径減少を認めたが明らかな腫瘍性病変としては指摘できなかった。上部消化管内視鏡検では 十二指腸3rd portionに食物残渣を認めた。後日、イレウスエイドを併用してscopeを進めたとこ ろ、Treitz靭帯より約10cmの空腸に比較的境界明瞭な周堤を形成する2/3周性の潰瘍性病変を認 めた。BiopsyではGroupV:adenocarcinomaと診断された。空腸造影では同部に一致して潰瘍 形成を伴う狭窄像として描出された。腫瘍マーカーはCEA:3.5, Ca19-9<1.0といずれも正常範 囲内であった。以上より、空腸腺癌と診断し、空腸部分切除術を施行した。病理組織診断は jejunum、2型、well differentiated adenocarcinoma、20×45mm、se、ly1、v0、n(−)、 ow(−)、aw(−)、ew(−)であった。術後経過は順調である。