サンワンリバーでの14日間 Part.5


ハンティング2日目

2日目も同じようにコーヒーを飲んで、迷彩服で体を包み、
コヨーテを呼んだ。
今日はライフルを握っている。
いつ現れるかわからないコヨーテに、神経を集中させる。
前から来るか、横から来るか、鋭く目は光る。
しかし、一匹も現れることなく2日目のハンティングは終了した。
ティムが車から冷えたクアーズ(ビール)を出してきて、
照りつける太陽の下、3人で乾杯した。
乾いた体に染みわたる旨さだった。
そしてビンはショットガンの的へと変わった。
ティムがまず手本を見せる。
なかなか当たらない。酔っぱらっているらしい。
ハンドガンとショットガンを撃ちまくり、
すべての玉が無くなったので、講習終了となった。


 Hold up ! 「手をあげろ!」 的はクワーズ

その日の午後は、ティムの兄ランディの引っ越しを手伝ってあげた。
巨大な観葉植物や、捨ててもいいような古い家具をあたらしいサンワンの新居に運んであげた。
おかげで夕食をおごってもらい、寝る場所まで提供してもらった。
ランディはパラシュートで空を飛ぶことが好きらしく、
この男もまた話し始めたら止まらず、
終いには5本ほどビデオを持ってきて次から次に見せてくれた。
早起きで眠いのに、なかなか眠らせてもらえない楽しい夜だった。
サンワンを俺らが発つ日までに、空の様子を見て飛ぼうと誘ってくれた。
これまた面白そうだ。


いつ行ってもいい魚がいいライズを繰り返している、
のんびり釣れるのがサンワンのいい所


サンワンの空へ

次の日はハンティングを休んで、久しぶりにめいっぱい釣りをした。
夢中になって魚を追いかけ、心ゆくまでもてあそばれる。
やっぱり釣りは面白い。改めて痛感した。
午後3時、夕方飛べそうだと言うので、
早めに釣りを切り上げ、エイブスに戻った。
ティムの家族と一緒に、ランディの待つ広場へと向かった。
広場に着くと、風を読む旗が立ち、
ランディが大きな扇風機の着いた車のエンジンを吹かしている。
この車にパラシュートを結び空へ飛ぶらしい。
ほんとにこんなので飛べるのかなぁ?
興味深い。
コインで順番を決め、まずは広兄から。
ヘルメットをかぶり、体をしっかりと固定し、いざ離陸態勢に入った。
なぜか、ヘルメットにはヘッドホンが装着してあり、
ロックンロールが流れている。これがランディのこだわりらしい。
エンジン音が大きくなり、車が勢い良く走り出した。
ブゥオーン・・・・
200メートルほどの加速で、車は空へ向かって昇っていった。
ホーッ。すげえなぁ。
日没直前の煮詰まった空気はオレンジから藍へと、すばらしいグラデーションを作り、
夕日に向かって飛ぶその姿は、言葉では言い表せない神秘的な光景だった。
続いて私の番。私はティムのビデオカメラ片手に飛んだ。
下から見たあの感動が、実際どんなだか期待した。
エンジン音と共に車体が宙に浮き、一気に車が豆粒に見えるまでところまで上昇した。
窓ガラスもなければ、壁も床もない。
頼りない骨組みで支えられているだけで、手も足もぶらぶらしている。
誰が考えたか知らないけど、よくもこんなものを作ったなぁと、
空まで行って感動してた。
遠くにサンワンリバーが流れ、
ディズニーランドのビックサンダーマウンテンのような土地が、
どこまでも続いている。
アメリカ広いなぁ、地球ってのは面白いところだ。
ちっぽけな空飛ぶ車から、自分の小ささをしみじみ感じてしまった。

    
           この夕陽を、日本から見ると朝日なんだろうなー

    
         ランディが空を飛ぶときは必ずロックンロールを聞く

エイブスに戻ると、始めて日本人の釣り人に会った。
ニューヨークで旅行関係の仕事をしているらしい。
テロのせいで仕事が減り、釣りに来ることが出来たという。
サンワンが初めてで釣れなくて困っているというので、
明日ハンティングの後、秘密の場所に連れて行ってあげることにした。
ランディとビデオを見ながら食事をして、モーテルに泊まった。

      
        趣味の話になると夢中になる。さすが兄弟。 
    ランディ:「さっき帰りにボブキャット(山猫)を見たんだよ」
     ティム:「ほんとに?それどこだよ」   

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