国際結婚WEB

日本人の配偶者等・婚姻要件具備証明書・ビザ(査証)・在留資格・在留資格認定証明書・帰化・永住・在留特別許可・国籍・戸籍・外国人登録・渉外戸籍・etc.

これより本文

◆◆◆メールマガジン国際結婚◆◆◆

複雑な法律手続きから、文化摩擦、生活設計、結婚生活の悩みまで、国際結婚に関するあらゆる情報をお届けします。

◆第63章 親権トラブルとハーグ条約◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。幸せな結婚生活に入ったものの、様々な原因で離婚に至るカップルがあります。言葉の壁があり、思考形態や生活習慣が異なる国際結婚カップルでは、同じ国のカップルよりも離婚率は高くなります。国際結婚カップルが離婚した場合、いちばん問題になるのは、子どもの親権の問題です。今回は9月下旬に発生し、ニュースになった親権トラブルを例に、子どもの親権の問題についてお話します。

9月28日の朝、福岡県柳川市内で、日本人の元妻に付き添われて通学途中だった小学3年生の長男と小学1年生の長女を、アメリカ人の元夫が無理やりに連れ去り、妻の110番通報の結果、米国領事館前に現れたところを逮捕され、2人の子供は無事に保護されるという事件が起こりました。二人は95年に日本で結婚し、今年の1月にアメリカのテネシー州で離婚したのですが、離婚の判決書では、「子供達は元妻とテネシー州内に居住し、年の内4カ月は本夫と過ごし、どちらかが州外に引っ越す場合は事前に相手側に連絡して同意を得る」「財産の半分を元妻に分与し養育費も支払う」ことなどが取り決められたそうです。ところが、元妻は今年の8月に連絡や同意を得ずに2人の子供と日本に帰国したため、テネシー州ウィリアムソン郡裁判所は子供の監護権は元夫にあると認め、地元警察は子供たちを略取したとして元妻の逮捕状を取り行方を追っていたそうです。日本の法律ではアメリカ人の元夫が未成年者略取をしたとなりますが、元夫からすれば、最初に約束や法律を破ったのは元妻の側であって、自分は正当な権利に基づいて子供を取り返そうとしただけだということになるわけです。

この事件に見られるような国際結婚の破綻による親権トラブルに関しては、「国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約(以下ハーグ条約)」という1983年に発効した国際条約があり、75ヶ国が批准締結していますが、主要国では日本とロシアだけがこのハーグ条約に批准していません。あとで述べるように、これは日本が必ずしも日本が法律的または人権に関して遅れているからというわけではありませんが、欧米各国からは、日本がハーグ条約を締結していないため、親権トラブルが多発しているとの批判が以前から強く、アメリカのメディアは今回の事件を大きく報じ、ワシントンの日本大使館前ではアメリカ人らの抗議行動も起きているそうです。福岡地検は10月15日に、元夫は反省しており、身柄の拘束は不要と判断したとして処分保留のまま釈放しましたが、翌16日にはアメリカのジョン・ルース駐日大使をはじめ、イギリス、カナダ、フランス、スペイン、イタリア、オーストラリア、ニュージーランドの8ヶ国の大使が千葉景子法務大臣を訪問してハーグ条約の締結を要望、会見後には「日本へ子供を連れ去られた親には子供を連れ戻す望みがなく、親の権利行使が非常に難しい。具体的な解決策を見いだすことが重要で、新政権に積極的に協力したい」とする共同声明を発表しました。これを受け、千葉法務大臣や岡田克也外務大臣は記者会見で、ハーグ条約加盟について前向きに検討したいとコメントしています。

ルース駐日大使などによると、国際結婚の破綻による親権トラブルでは、日本人が海外から子供を連れ帰る例が多く見られ、アメリカでは現在82件、フランスでは35件把握されているそうです。一方、外国人配偶者によって子供が日本から海外に連れ出されるケースも、2001年以降に少なくとも9件確認されているそうです。離婚後の子供の親権に関しては、日本では文化的に母親が引き取る割合が高く、家庭裁判所では毎年約2万件の朝廷や審判が行なわれていますが、例えば平成20年度は、母親が親権者とされた割合が91.4パーセントになっています。これには協議離婚は含まれていませんが、協議離婚でも母親に引き取られる割合がほとんどです。しかし、欧米では父親に親権が認められることも比較的多く、普段は母親と暮らし、週末や年の内数ヶ月は父親のところで暮らすなどと、細かく規定されることが多いです。当事者同士では顔も見たくないというような場合でも、子供との関係は別で、離婚してしまえばほとんど付き合いがなくなるというようなことは、虐待や各種中毒などのケースを除けば少ないようです。

このような文化的な違いもあり、国際化・国際結婚の増加に伴って問題は拡大しつつありますが、じつはこれまで日本がハーグ条約に加盟して来なかったのは、日本人にとって違和感のあるレベルまで法的権利を強く主張する欧米社会に対する警戒心もあったという事情があります。どの国であれ、自国の裁判所は自国民に有利に働くことが多く、外国人配偶者と価値観を共有する裁判所で、日本の価値観や慣習などを考慮しない一方的な判決が下される恐れがあるからです。子供を連れ帰った日本人親の中には、海外の裁判所から誘拐罪で起訴されるケースも確認されていますが、その場合でも日本の法律には違反していないため、子供を連れ戻されたり逮捕されたりすることはありません。しかし、ハーグ条約が締結されれば、今後は状況が変わってくるでしょう。

日本がハーグ条約を批准するかどうかはともかく(民主党政権は批准しそうですが)、今後も国際結婚の破綻による親権トラブルは、多くなることはあっても少なくなることはないでしょう。

平成21(2009)年11月1日

← 前のページリストに戻る次のページ →

Copyright(c) H17〜 K-office. All rights reserved.