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◆◆◆メールマガジン国際結婚◆◆◆

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◆第60章 国籍取得届の手続き◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。今回は国籍取得届の手続きについて解説します。当メルマガでも何度か取り上げていますが、昨年12月に国籍法が改正され、父母が結婚していない場合でも、日本人の父親に認知されれば日本の国籍を取得することができるようになりました。この改正については法務省のウェブサイトやパンフレットなどでも詳しく広報されているのですが、法律用語を読みなれていない方にはわかりにくいのか、当事務所にも何度か問い合わせがありました。そこで、今回は国籍取得届の手続きについてごく簡単に解説しようと思います。

生まれた時に父母が結婚していなかった場合、昨年国籍法が改正されるまでは、母が日本人で父が外国人の子は日本国籍を取得できましたが、父が日本人で母が外国人の子は日本国籍を取得できませんでした。ただし、これには特例があり、日本人の父が認知した上で父母が結婚すれば、準正と言って嫡出子の身分を取得するので、国籍取得届を提出すれば日本国籍を取得することができました。しかし、日本人の父が認知しても父母が結婚しない場合は、日本国籍を取るには帰化しなければなりませんでした。このような状態に対して、母が日本人の場合と父が日本人の場合で取り扱いが異なるのは不公平だとして各地で裁判が起こされ、その結果、昨年12月に国籍法が改正されたという経緯です。

新しい国籍法では、日本人の父に認知された子は、20歳未満で、父が現在も日本国籍(父がすでに死亡している場合は死亡した時点で日本国籍であったこと)の場合は、国籍取得届を提出するだけで日本国籍を取得することができます。

手続きは、日本国籍を取得しようとする本人が、住所地を管轄する法務局・地方法務局または在外公館に直接出向いて届書を申請します。郵送では申請できません。ただし、本人が15歳未満の時は父母などの法定代理人が代理で手続きします。申請にかかる手数料はありません。

必要書類は、

  • (1)認知した父の出生時からの戸籍謄本・除籍謄本または全部事項証明書
  • (2)本人の出生証明書
  • (3)認知の経緯等を記載した父母の申述書
  • (4)母が妊娠した時期の父母の渡航履歴を証する書面
  • (5)その他親子関係を認めるに足りる資料
  • (6)住所証明書(登録原票記載事項証明書・旅券の写しなど)
  • (7)法定代理人が届出をする場合は、法定代理人の資格を証する書面

ですが、(3)(4)をやむを得ない理由により添付することができない時は、その理由を記載した書類を提出すれば省略できますし、裁判認知の場合は(3)〜(5)は不要です。

留意すべき点として、国籍取得届の提出によって日本国の国籍を取得した時は、韓国など国によっては、それまでの国籍を自動的に失なう場合があります。また届出によって日本の国籍を取得したことにより重国籍となった人は、将来的に国籍の選択をする必要があります。届出によって日本国籍を取得した時は、国籍証明書を持参して、市区町村で戸籍の届出をする必要があります。同時に外国人登録証は返納します。父母が婚姻している場合は父母の戸籍に入り、婚姻していない場合は新たな戸籍が作られます。また国籍取得後の氏名は、父母が婚姻している場合は父母の氏(姓)に、婚姻していない場合は本人(法定代理人)が選んだ氏になります。

なお、20歳以上であっても以下の者については経過措置として国籍取得の道が開かれています。

(1)昭和60年1月1日から平成14年12月31日の間に国籍取得届を提出していた者

上記の時点では準正要件を満たしていないとして国籍を取得できなかったのですが、提出当時に国籍法が改正されていれば国籍取得できたはずだとして、届出時に20歳未満だった者は、法施行日(平成21年1月1日)から3年以内に国籍取得届を提出すれば、日本国籍を取得することができます。また、上記の結果日本国籍を取得した者の子で、過去の届出後日本国籍を取得する間に生まれた子も、過去の届出によって親が日本人になっていれば日本人の子として出生していたということで、法施行日から3年以内に国籍取得届を提出すれば、日本国籍を取得することができます。ちなみに昭和60年1月1日というのは、父親が日本人の場合にだけ日本国籍を認めていた父系血統主義を改め、父母のどちらか片方でも日本人であれば日本国籍を認めるという男女平等の父母両系血統主義に改正した国籍法・戸籍法が施行された日で、本来ならその時点から今回のような手続きであるべきだったという考え方に基づくものです。

(2)平成15年1月1日から平成20年6月4日の間に国籍取得届を提出していた者

同じく、その時点では国籍を取得できなかったのですが、提出当時に国籍法が改正されていれば国籍取得できたはずだとして、届出時に20歳未満だった者は、法施行日(平成21年1月1日)から3年以内に国籍取得届を提出すれば、過去の届出時点に遡って日本国籍を取得することができます。ちなみに平成15年1月1日というのは、平成14年11月22日の合憲判決との整合性を考え、この頃から憲法14条1項の法の下の平等に違反するようになったという考え方に基づくものです。

(3)平成20年6月5日から平成20年12月31日の間に国籍取得届を提出していた者

同じく、その時点では国籍を取得できなかったのですが、届出時に20歳未満だった者は、法施行日に国籍取得届を提出したものと見做され、新たに国籍取得届を提出する必要なく、過去の届出時点に遡って日本国籍を取得します。ちなみに平成20年6月5日というのは、違憲判決が出たのが6月4日なので、その判決で実質的には法律が改正されているという考え方に基づくものです。

(4)昭和58年1月2日から昭和64年1月1日に生まれた者

以前に国籍取得届を提出していなくとも、上記に該当する者で20歳になる前に日本人の父に認知されていた者は、法施行日から3年以内に国籍取得届を提出すれば、日本国籍を取得することができます。ちなみに昭和58年1月2日というのは、この日に生まれていれば平成15年1月1日にぎりぎり20歳未満として国籍取得届の提出が可能だったということです。また、昭和64年1月1日というのは、昭和64年1月2日に生まれていれば法施行日(平成21年1月1日)に20歳未満として国籍取得届の提出できるが、昭和64年1月1日生まれの者は20歳なので提出できないとして、経過措置が設けられています。昭和64年1月2日生まれの者が国籍取得届の提出できるのはわずか1日(平成21年1月1日)だけなのに、昭和64年1月1日生まれの者は平成23年12月31日まで考える余裕があるというのは何か釈然としない感がありますが、法律というのはそういう考え方をします。

さて、改正から半年近く経過しました。法務省の試算では年間600人から700人がこの法律の適用を受けるということですが、この件を管掌している法務省民事局からこの改正による届出と処理の状況が、「改正国籍法に伴う国籍取得届の状況」として公表されています。このメルマガの発行段階では平成21年1月1日から5月1日までの分が公表されているのですが、月一回更新されますので、このメルマガをお読みになっている頃には更新されているかもしれません。
入国管理局「改正国籍法に伴う国籍取得届の状況」

ところで、話は変わりますが、国籍取得届には「認知された子の国籍取得」以外に「国籍の再取得」があり、これは日本国籍の未留保により日本国籍を喪失した者などの場合の規定で、海外で生まれて日本と外国との重国籍となった子は、生まれた日を含めて3ヶ月以内に出生届と日本国籍留保の届を提出する必要があり、提出しないまま3ヶ月経過すると、生まれた日に遡って日本国籍を失なうことになっています。これは、昭和59年に国籍法を父母両系血統主義に改正した際に、なるべく重国籍が生じないように作られた規定なのですが、海外で生まれた子供だけに適用され、国内で生まれた子供には適用されません。理由としてはアメリカやフランスのように属地主義を取っている国ではそこで生まれたということだけで国籍が与えられ、日本人父母の子でもその国の国籍が与えられるので、重国籍が生じやすいからだということになっています。

この国籍留保の届出をしなかったことで日本国籍を失なった人は、20歳未満で日本に住所がある場合、国籍取得届を提出して日本国籍を取得することができます。これが「国籍の再取得」と言われているものですが、20歳未満というのは「認知された子の国籍取得」と同じですが、日本に住所があるというのがもう一つの要件になっています。この住所というのは単に住んでいるというだけではなく、生活の本拠として住んでいることが法律上必要だということになっていて、例えば公職選挙法では、選挙権を有するのは引き続き3ヶ月以上市町村の区域内に住所を有する者、引っ越してきた場合は転入届を出した日から3ヶ月以上居住していることとなっていますが、「国籍の再取得」の処理では3ヶ月よりさらに長く、少なくとも半年(なるべく1年以上)は日本に居住している必要があることと扱われていて、海外(在外公館)でも手続き可能な「認知された子の国籍取得」とは大きな開きがあり、再取得したい人にとって障害になっています。国籍留保の届出を親が出しておきさえすればよかったということではあるですが、この程度のことは国際化の時代において速やかに見直されてもいいのではないかと思います。

平成21(2009)年6月1日

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