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◆◆◆メールマガジン国際結婚◆◆◆

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◆第59章 定住外国人支援◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。3月1日の当メルマガ『第57章 在日外国人と不況』の結びで「日本人労働者の対策と同時に、日本の経済を支えてきた、また少子高齢化で人口が減っていく今後の日本を支えるであろう外国人労働者の対策も、長期的な観点から真剣に考えていく必要があるでしょう」と書きましたが、その後、政府から定住外国人に対する支援策がいくつか発表されました。今回は、これについて簡単に取り上げましょう。

まず3月31日に、厚生労働省から「日系人離職者に対する帰国支援事業の実施について」が発表されました。それによると、今回の不況下において日系人が離職した場合、日本語能力の不足などもあって再就職が極めて厳しい状況にあるとして、再就職を断念して帰国を決意した者に対して、ハローワークを通じて本人には1人当たり30万円、扶養家族については1人当たり20万円(雇用保険受給期間中の者については、支給残日数が30日以上の場合は10万円、同日数が60日以上の場合は20万円をプラスする)の帰国支援金を支給するとなっています。ただし、これには条件が付けられていて、帰国して当分の間は従前の身分に基づく在留資格(日本人の配偶者等あるいは定住者の在留資格)では再入国が許可されないこととなっています。

この支援事業に対しては、入国制限という条件に関して賛否両論がありますが、入国制限は要するにこの制度が一時帰国のために安易に利用されることを防ぐために設けられているものなので、やむを得ないものであると思います。ただ、たしかに「当分の間」というのはあまりに裁量の含みがありすぎて、3年なら3年、5年なら5年と明確に年限を区切るべきだと思いますが、一般の外国人と比べて特権性のあった日系人としての立場以外での在留資格(例えば「人文知識・国際業務」や「技術」「技能」など)による入国は制限されないようですし、自費で帰国する場合はこの制限はありません。また、在留を続けて再就職を目指す人に対しては、従来からの再就職支援、雇用維持のための各種事業や住宅確保支援策などは引き続き行なわれますので、帰国を強制しているというものでもありませんから、全体として選択肢が増えたということで概ね評価できると思います。
※厚生労働省「日系人離職者に対する帰国支援事業の実施について」

つづいて、4月16日には定住外国人施策推進会議から各省庁の支援策をまとめた「定住外国人支援に関する対策の推進について」が発表されました。定住外国人施策推進会議は小渕優子少子化担当相を中心に関係省庁の幹部らで構成されていて、内閣府が1月9日に立ち上げた定住外国人施策推進室の業務に基づくもののようです。ここでは詳述しませんが、各省庁の支援策が、教育対策・雇用対策・住宅対策など7項目に分類されており、上述の帰国支援や以下の2項目の支援策も含まれています。
※定住外国人施策推進室「定住外国人支援に関する対策の推進について」

4月27日の新聞報道によると、文部科学省は景気回復までの緊急措置として今後3年間、約50カ所に日本語教室を設置するようです。これは、不況で家計が苦しくなり、外国人学校に通えなくなった日系人の子供たちが学費の安い公立学校に転入しやすくするためのもので、集住地域において日本語教室を行なう自治体や市民団体などを公募し、年間数千万円程度の運営費全額を交付し、日本語や算数などを無料で指導、公立学校との相互訪問も行なって日本の学校や生活習慣になじめるようにするというものです。ようやく外国人の子供たちに対する国レベルでの本格的な教育支援が始まったという感じがしますが、この制度は、外国人学校に通って一定水準の教育を受けていた子供だけではなく、定住外国人の子供の中で相当数いる教育を受けないままの状態にある子供たちの受け皿にもなるように運営してもらいたいものです。

4月28日には厚生労働省から「日系人就労準備研修事業の概要」が発表されました。これは、集住地域の日系人求職者を対象に、日本語コミュニケーション能力の向上、日本の雇用慣行や労働・社会保険制度など基本的知識の習得などの就労準備研修を実施し、就労に必要な知識やスキルを習得させ、円滑な求職活動を促進して安定雇用の促進を図るものです。不況により離職を余儀なくされた集住地域の外国人は、昨年と比べて10倍以上の1万人近くに上っており、再就職支援が大きな問題となっていましたが、この新しい支援事業は、研修期間は3ヶ月程度で、5月11日から静岡県浜松市で行なわれるのを皮切りに、愛知県豊田市、神奈川県大和市、愛知県岡崎市、岐阜県美濃加茂市・可児市の5箇所で今月から実施されます。これまでの就職支援は、給付とマッチングが中心で、能力開発やスキルアップの要素が弱かったのですが、再チャレンジにはスキルアップが欠かせないものなので、その点が大きく評価できます。
※厚生労働省「日系人就労準備研修事業の概要」

平成21(2009)年5月1日

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